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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

サイカノ 設定

一次創作・最強と最弱の彼女の設定です。


世界(アル・エンクロゥーネ)・・・志宝院優雨たちが住む大地。

古い言葉で箱庭を意味する。周囲を闇に囲まれていることからそう名づけられた。
闇は長い時間をかけてゆっくりと取り払われ、闇の中から新しい大地が現れるため
拡張を続ける世界は頻繁に地図が書き換えられている

マナと呼ばれるエネルギーが世界に満ちており、人々はそれを用いて
魔法を行使することができる。

世界中に多くの遺跡がある。確認されているだけで、その数50。

中には財宝や魔法書と共に、それを護る番人が最奥部にいる。
入るには遺跡を管理する近場の魔法学校の校長の許可が必要だが、
財宝を狙って不法に侵入する盗賊が後を絶たない。

また、中は魔物たちの巣窟と化している。


マナ・・・生命と世界を構成する魔法の力の源。
   
空気中に大量に存在し、人体にも流れている。

火・水・風・土・光・闇・無の七つからなる。

人によって得意な魔法の属性は違い、眼からそれを判断することができる。
(火に長けた者は緋色の目で、水に長けた者は瑠璃の目をしている)

基本的に皆、自分の長所を伸ばす。
自分と対極する属性の魔法を習得することも一応可能だが、
威力や燃費が悪く、苦労に見合わないため手を出すものは少ない。

3つ以上の属性の魔法を使えるなら秀才、 
4つ以上で天才と呼ばれる領域になる。

※水月とマリアは全ての属性の魔法の行使が可能。

人はその生命が終わりを迎えた時、マナとなって世界へ還る。
その時身体は消滅して、骨すらも残らないため
この世界に「墓」という概念は浸透していない。
(権力者が己が力の誇示のため造らせることはある)


使い魔・・・人形などに命が込められ、、自立して動くものを称する。

魔法使いはものに「意思」を与えることができる。
例えばピアノなら独りでに音を鳴らし、箒なら自動で床を掃かせることができる。
あくまでもこれは魔法使いによる命令であり、生命ではない。

腕のいい魔法使いほど複雑な命令を与えることができるが、
一定のレベルを超えた魔法使いは物体に生命を与えることを可能とする。

生命を与えられた使い魔は自ら考え、行動し、魔法の詠唱もできる。

マスターのマナによって活動し、何らかの理由で供給が途絶えると
使い魔は動けなくなってしまう。

なお、マスターが眠っている時にも使い魔は単独で行動ができる。


ルーシェ国立魔法学校・・・優雨たちが在籍する大規模な魔法学校。

10階建ての4つの校舎からなり、設備もそこに集まる講師の質も
世界トップクラス。生徒の数は1000を優に超える。

マリア・インフェリアーレを学校長とする。

この学校の特色として、入学時に筆記や実技試験はなく、
基本的には誰でも無条件で(唯一、年齢制限がある)入学可能という点が挙げられる。

魔法使いは星出水月のように入学してから才能を開花させる者も少なくないため、
生徒たちの可能性を長い目で見るというマリアの意図がそこにある。
(努力が報われず中途退学する生徒も多い)

卒業は年齢によって決まるのではなく、生徒の能力、個性に合わせて
個別に課せられる試験をクリアすることで卒業できる。

魔法学校にも文化祭はあり、生徒のNO.1とNO.2が戦う
「演舞」という種目は非常に盛り上がる。



主なキャラ

志宝院 優雨(しほういん ゆう)

最弱の彼女。

高名な魔法使いを多数輩出してきた名家に生まれる。
しかし魔法使いとしての才は無いに等しく、一家の恥として感動されてしまった。
現在はカフェでのアルバイトで生計を立てている。

いつも明るく前向きな性格。多少くじけてもすぐに元気を取り戻す。
心に一切の邪念がなく、本当は誰とでも打ち解けることができるのだが
その凡庸さから他の生徒たちに見下されている。

友達と呼べるのは水月しかいない。

得意な呪文は特にないが、強いて言えば水属性。
瑠璃色の眼をしている。


星出 水月(ほしいで みつき)

最強の彼女。

無名の家の出身だが、魔法学校の講師すら降す魔力を持ってしまった。
正真正銘の天才で、単純な戦闘において敗れたのは一度のみ。
しかしあまりに突出した才能から疎まれ、仲が良いのは優雨だけ。
優雨のことを何より大切に想っている。

基本的にクールであまり感情を表に出さないが
優雨のことになると一変する。

全ての属性の魔法を使えるため、得意な属性も苦手な属性もない。
眼の色は優雨と同じ。

ミューイという名の使い魔がいる。


志宝院 風香(しほういん ふうか)

優雨の義理の妹。志宝院家の分家である、三ノ宮家から引き取られた。
プライドが高く、魔法使いとしての腕もかなりのものだが
ひねくれた性格。優雨のことを見下している。
水月に対しては羨望と嫉妬の対象であるものの、
やりあっても敵わないので手を出すことはない。

緑碧玉色の目が示すとおり、風の魔法を得意としている。

生徒のNO.2で、既に卒業も決まっている。


マリア・インフェリアーレ

魔法学校の校長。容姿は10歳ほどの少女にしか見えないが
その実力は他の追随を許さない、魔法使いの頂点。
唯一水月に土をつけた人物。禁術やオーバーテクノロジーに詳しい。
無邪気で子どものような性格をしているため周囲を振り回すが、
口にも態度にも出さないが生徒たちのことを子どものように大切に想っている。

学校の最初の卒業生と同姓同名だが関係は謎。

瞳の色は珍しい黒色。水月と同じく全ての属性の魔法を
絶対なる威力で使いこなす。



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  1. 2015/02/03(火) 23:44:08|
  2. 最強と最弱の彼女
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最強と最弱の彼女 第5話

世界には、確認されただけで50ほどの遺跡がある。

闇の中には、まだ未知の遺跡が多く眠っているだろう。

遺跡の共通点として、内部は凶暴な魔物たちの巣と化していることが挙げられる。

うかつに足を踏み入れて、二度と生きて外に出れない者も多く危険なため、
遺跡は最も近くにある学校の長が管理する決まりとなっており、
中へ入るには許可が必要だ。

だが、盗賊など無断で侵入する者も後を絶たない。

最深部には、古の財宝が眠っているからだ。

「何だこりゃ。どこの馬鹿の仕業だ」

遺跡の入り口の門が、無残に破壊されている。

爆弾を使ったのだろう。周囲にはまだ火薬の臭いが漂っている。

破壊されてからあまり時間は経ってないようだ。

「財宝目当ての盗賊の仕業かもしれませんね」

「歴史的遺産に傷をつけやがって。星出、見つけたら半殺しにしていいぞ」

「教師のくせに物騒・・・でも、同感」

何もカレンのためだけに護衛を引き受けたのではない。

水月には水月の目的がある。

それを邪魔するなら、看過はできない。

「そんじゃ、行くとしますか」

水月が先頭に立ち、内部へ踏み出してゆく。

「光の風よ、生命を抱く繭となれ・・・」

カレンの肩の上で、ミューイが防御魔法を唱えた。

魔法の膜が、二人を包み込む。その膜は何よりも頑丈で、
あらゆる攻撃を弾き返す。

攻撃魔法を一切使えない代わりにヒーリングや防御魔法のスペシャリストであり、
本来は優雨を護らせるために仮初めの命を与えられたミューイ自慢の魔法だ。

遺跡の内部は薄暗く、水月たちは警戒しながら進む。

「待て。血の臭いだ・・・近いね」

前方に人が倒れていた。恐らくは盗賊だろう。
心の臓を矢で貫かれており、既に絶命していることは明白だった。

「こんな所でくたばりやがって。命を粗末にするな、ばかやろう」

カレンが力任せに矢を引き抜く。

飛び散った血はカレンの頬を汚した。

遺体が淡い光を放ち、ゆっくりと消失していく。

雪が溶けるように静かに形が無くなってゆく。

やがて光が収まった頃、そこにはもう、何もなかった。

魔力――マナ――となって、世界へ還っていったのだ。

人は皆、その生涯を終えると跡形も無く消滅する。

これは人として生まれた者の、避けようのない終末だ。

「うかつに進めばあたしらも二の舞だ。こいつを使うよ」

カレンが取り出したのは特製のペイントボール。

破裂して中の液体が飛び散ると、ワナが仕掛けられた床や壁に
意思を持つかのように動いて付着する。

後はそこを避けて慎重に進めばいい。

「便利ですよね~、これ」

水月は頷き、再び足を動かす。

「敵がいる・・・」

水月の指摘より早く、前方から火炎の渦が水月たち目掛けて襲ってくる。

水月は腕を突き出し、マナを扇形に展開することで受け止めた。

ばちっ、ばちっとマナと火炎放射がせめぎ合い、火花を散らす。

立ち塞がったのは、地獄の番犬だ。

その鋭い爪と牙は獲物を捕えれば二度と離さないだろう。

「お~あれはケルベロスじゃないか。しかも5つ首とはレアだねぇ」

「ぶっさいくな顔ですねぇ」

緊張感のない二人の軽口は、水月の勝利を確信しているからだ。

「そのマナ、もらう」

水月は扇から同質のマナを炎に混入させ侵食し満たすことで、
炎の渦を己の制御下に置いた。

敵の攻撃を、乗っ取ったのだ。

「そして・・・返す・・・!」

扇を払い、炎が発生した熱風と共にケルベロスを襲う。

ケルベロスは全身を焼かれ、切り刻まれ、断末魔をあげて動かなくなった。

「マスターの敵じゃなかったですね」

「まったく、こうも実力差があると敵に同情したくなるね」

「殺らなきゃ、殺られるから」

「その通りだけどさ、やっぱりお前は残酷だよ」

「残酷・・・?」

水月は首をかしげる。

「もっと一瞬で楽にしてあげたほうがよかった・・・?」

「そうじゃなくて。その強さで、志宝院の傍にいることがだよ」

「・・・・・・」

「ことあるごとにどうしようもない才能の違いを見せつけられるんだ。
 まともな神経じゃやってられないと思うんだけどね」

「そんな繊細な人じゃないと思いますよ。
 優雨さんは諦めの悪さだけが取り得ですから」

「ミューイは黙ってて・・・私は優雨と約束した、優雨の成長を傍で見守るって。
 だから先生にそんなことを言われる筋合いはない」

「ま、そりゃそうだ」

カレンはあっさり引き下がり、別の話題を振る。

「その右手の指輪。それが学校長にもらったってやつか?」

「・・・そう。常に私の身体から一定のマナを放出してる」

水月の右手の薬指に黄金色に輝く指輪。これがなければ
水月は魔法を制御することができない。

「もし、それが壊れたらどうなるんだ?」

「行き場を失ったマナが暴発して、傍にいる人を襲うと思う」

水月の底知れない才能は、まだ少女である水月本人さえもてあます。

大人になるまで外してはいけないという、マリアの命令だ。

「大丈夫なのか?敵の攻撃で割れたりしないのか?」

「ひっどいなぁ、マリアが造ったんだよぉ?大丈夫に決まってるじゃ~ん・・・って
 学校長が言ってた」

「そ、そうか・・・学校長がそう言うなら大丈夫だよな・・・たぶん」

学会ではアウトローである自分を拾ってもらった恩義はあるが、
カレンにとってもマリアは変な人物という位置付けである。

「そんなことより早く先に行きましょうよ。夜になりますよ」

3人は再び調査を再開する・・・


同時刻。

校門を出て表通りは抜けず横道にそれ、裏通りを数分ほど直進した所に
そのカフェは存在する。

人目につかない立地ながら、客足が途絶えることはない。

店内に入れば荘厳なピアノの旋律が客を出迎え、
アンティーク調のテーブルや椅子、わざと暗めに調節された照明が
大人の雰囲気を醸し出している。

「優雨、そろそろあがっていいぞ」

「あ、はい」

ここは、志宝院優雨が働いているカフェだ。

店のマスターは優雨の事情を知る良き理解者であり、一応の保護者でもある。

その顔立ちや立ち振る舞いはダンディという表現がふさわしく、
独身なこともあり彼を目当てに訪れる女性客も多い。

ちなみに、ここの客層の9割は女性である。

なぜならば、マスターが魔法で作った
「食べても太らないケーキ」が売られているからだ。

「いらっしゃいませ」

来店を知らせる鈴の音が鳴り、ドアに目をやると

「あ、学校長」  「やっほー、優雨ちゃん」

マリアは自分の背よりも高いカウンターの椅子に身軽に飛んで腰掛けた。

「いつものやつですか?」

「うん、お願い!」

「かしこまりました。マスター。厨房をお借りしますね」

「ああ」

数分後・・・・


「いっただっきま~す」

チキンライス・ハンバーグ・ポテトにサラダ・デザートにプリンが
子供用のプレートに盛り付けられている。

マリアが注文したのは、裏メニューの優雨特製のお子様ランチ。

「熱いから気をつけてくださいね」

「うん!」

優雨の注意を聞いているのかどうか。

マリアは矢継ぎ早に飲み込んで案の定、熱さに苦しむことになった。

慌てて水を大量に飲み込んだことで今度は盛大にむせる。

「だ、大丈夫ですか?」 優雨がマリアの背中をさすってあげる。

その光景に名門校の長たる威厳はどこにもない。

マスターもやれやれと肩をすくめている。

世界最強の魔法使いは、かなりのおっちょこちょいでもあった。


優雨は自宅へ。マリアは校舎へ。

姉妹のように手を繋ぎながらア歩く二人は校門で足を止めた。

「それでは、ここで失礼しますね」

「うん、気をつけて帰ってね」

どちらからともなく手を離し、優雨は背をマリアに向ける。

「あ、そうだ。優雨ちゃん」

「何ですか?」

斜陽の光に照らされながらマリアはいたずらっぽい笑みで、

「二重契約してみない?」と、言った。



  1. 2014/11/12(水) 18:11:52|
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一次創作 最強と最弱の彼女 第4話

星出水月は、特例として授業への出席を免除されている。

戦闘において魔法を使わせたなら、他者にできて水月にできないことなど
皆無に等しいと言っても過言ではないからだ。

魔法はいくつかの属性に大別することができ、その習得や詠唱の過程で
個人差により得手不得手という問題が発生するが、
水月はそんな地点には存在していない。

水月はあらゆる属性の魔法を、絶対なる威力をもって唱えることができる。

そのため本来なら、水月が学校に通う必要はないのだが、
水月を学校に向かわせるのは彼女の気まぐれと、優雨の存在によるところが大きい。

最強の少女にとって、最弱の少女は誰よりも特別だった。

「やっぱりここにいたのか」

森の中の泉の傍で寝そべっていた水月は、
身体を起こし顔を声の方へ向ける。

白衣のポケットに手をつっこみ、けだるそうにタバコを吹かせる赤髪の女性。

均整の取れた顔立ちだが、あまり興味がないのか
化粧はしておらず髪も無造作に束ねている。

「他のやつらは授業中だってのに堂々とサボりやがって」

「校内の敷地でタバコを吸う教師に言われたくありません」

彼女の名は、カレン・クルシューエ。

学校の講師の一人で、世界的な考古学者でもある。

「新しい遺跡が見つかったから、護衛を頼みたいんだけど」

「・・・わかりました」

「おまえ、よくここにいるよな。何か思い出でもあるのか?」

「・・・・・・」

限られた者しか近づかないこの場所は、優雨の秘密の特訓場であり。

水月と優雨が、初めて逢った場所だった。


放課後。

マスターと使い魔を繋ぐテレパシーで水月に呼び出されたミューイが、
膝立ちになったカレンの肩へ上る。

「優雨は?」

「ちゃんとバイトに向かいましたよ」

「ならいい。それじゃ・・・行きましょう」

目的地は学園の遥か南西。

昨日まではなかった空間に姿を現した、未知の遺跡だ。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・何が待ってるんだかね」

「鬼が出ても蛇が出ても、マスターがやっつけるから大丈夫です!」

「油断は禁物。ミューイは気を抜かないで自分の仕事をすること・・・」

水月は風で乱れた前髪を整える。

その右手の薬指には、黄金色に輝く指輪があった。


――――――――――――――――――



ソレがいつからあったのか、その問いに答えうる者は
もはやこの地上に存在しない。

しかし、ソレは水月たちの住む世界を四方から囲むように確かに存在し、
まるで床を這う赤子のような緩やかな速度で、隠れていた大地を
闇の中から引きずりだしている。

そのため人々は、己らが世界にアル・エンクロゥーネ―――箱庭―――と名付けた。

新たな地表の出現と共に、毎日書き換えられていく地図。

世界がどこまで広がり続けるのか・・・それは誰も、知る由もない。


  1. 2014/07/08(火) 00:30:39|
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一次創作 最強と最弱の彼女 第3話

講師たちが集まって開かれた会議は、順調に議題を消化し、
残るは水月の卒業試験についてとなった。

ルーシェ国立魔法学校では、学年で卒業が決まるのではなく、
生徒の能力、個性に合わせて個別に課せられる試験を
クリアすることで卒業できるのだ。

講師たちの案を精査し、最適と思われる試験が適用され、
その内容は多岐に渡るのだが、水月については長い間保留されていた。

何をやらせても絶対に合格しそうで試験にならない、というのが理由である。

「もう、無条件で卒業でいいのではないでしょうか。あれほどの才能を
 いつまでもこの学校に置いておくのは、あまりにもったいないですよ」

「しかし、そんな前例も無いですし・・・」

「いや、前例は一応あるのですよ。たった一人だけ・・・
 300年前に開校して、一番最初の卒業生がそうでした」

この学校に詳しい、勤務暦の長い講師たちが、彼女を見る。

その伝説の卒業生と、同姓同名の彼女を。

無論、ただの偶然だと彼らは思っている。

思っている・・・が、万が一ということもあるかもしれないと感じてもいた。

視線の先の彼女は、どうみても10歳前後の容姿で、
300年も続く名門校の長を務めている謎の少女なのだから。

もっとも、それを本人に直接聞く勇気のある者は、誰もいなかったが。

「学校長と星出の一騎打ち、というのはどうでしょう?」

その案は皆が首を振って否定する。

以前まともに正面から二人がぶつかった結果、
校舎が半壊した悪夢を思い出したのだ。

「あはは、校舎は結界で守りながら戦うつもりだったんだけど、
 水月ちゃんって強いよね!そんな余裕、全然なかったよ」

バトルの後、教頭にこっぴどくしかられたマリアも思い出したらしい。

「星出はそんなにすごいのですか・・・」

「しかし、さすがに星出でも、学校長には叶わないでしょう」

「そうでもないんだよぉ?今はマリアの方が強いけど、
 いつかは勝てなくなるんじゃないかな」

マリアは軽く言うが、講師たちを驚愕させるに十分だった。

「まぁ・・・勝てなくても、負けはしないけどね」

ぼそっと呟いたマリアに、講師たちは刹那、戦慄を覚える。

得体の知れない恐怖、見えない刃を首筋に押し付けられたような
感覚という表現が正しいだろうか。

そんな殺気じみたものを、刹那マリアは放っていた。

「そ、そもそも何故星出はこの学校に入学したのですか?
 あれだけ強いのだから、全く必要ないと思うのですが」

冷や汗をかきながら講師の一人が尋ねる。

「それがね、水月ちゃんは最初、とても目立たない子だったんだよ。
 同級生の中でも、強さは下の方だったんじゃないかな?」

信じられないと言った体で講師たちが顔を見合わせる。

無理もない、水月は今、100年に一人の天才と謳われているのだから。

「そんなある日、突然強くなっちゃったの。才能が開花したんだね。
 でも、まだ子どもだから、自分の能力を制御しきれなくて、
 魔法を所構わず暴発させてたから、マリアが水月ちゃんに魔法をかけて
 魔力を少しずつ、自然に放出させてるんだよ」

小さな器に水を注ぎすぎると、水は溢れてしまう。

そういう意味では、まだ幼く、体が成長しきっていないことが、
水月の唯一の弱点と言えるだろうか。

「とりあえず水月ちゃんの試験は、マリアに任せちゃってほしいな。
 こっちで考えとくから」

学校長がそう言うならと、講師たちも頷いた。

「さぁ~て、これで会議は終わりかな?」

「あの、もう一つだけいいでしょうか・・・?」

講師の一人が挙手する。

「何かな?」

「志宝院優雨についてです」

水月だけではない。
優雨もまた、処遇が決めかねられていた。

その理由は、正反対だった。

「志宝院は・・・真面目な生徒です。しかし・・・」

その先は言葉にしなくても容易に把握できる。

恐らく、志宝院優雨はこの学校を卒業することはできないだろう。

しかし、今まで誰もその残酷な現実を本人に告げることはなかった。

才能が無いから、魔法の練習をしても無駄だと切り捨てるのは、
講師という立場でも躊躇われるのは当然だろう。

優雨が凡人なため実父から勘当されているのは周知の事実であり、
更に傷口に塩を塗るような真似を、好き好んでできるはずがない。

一方で、いつまでも先延ばしにもできなかった。

このまま学校に在籍させるか、優雨のためを思い心を鬼にして、
自主退学を勧めて別の道に進めさせるか。

二つに一つだった。

「いい子なのですけどね・・・」

だからこそ、講師たちも悩んでいる。

講師たちに優雨を嫌う者は一人もいない。生活態度は真面目であり、
真摯に魔法を練習する姿は、他の生徒たちの手本にしたい程だ。

しかし、魔法使いを志す限り、魔法を使えなければ話にならない。

優雨の問題は、あまりにも複雑だった。

「・・・マリアが言うよ」

「え・・・?」

いつになく真剣な表情で告げる。

「優雨ちゃんのことも、マリアに任せて。もちろん優雨ちゃんの気持ちが最優先だけど、
 言わなきゃいけない状況になったら、マリアが伝えるよ。
 それがマリアの役目だと思うから」

「・・・では学校長、よろしくお願いします」

マリアは面持ちを崩さず、小さく頷いた。


  1. 2013/04/30(火) 00:26:54|
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一次創作 最強と最弱の彼女 第2話

最底辺の魔法使い、志宝院優雨を100年に一人の凡人とするなら。

星出水月は、100年に一人の大魔法使いとされている。

まだ年端もいかない少女でありながら、講師たちを遥かに上回る
絶大な魔力を誇り、彼女と対等以上に渡り合える者は
世界でも数えるほどしかいないとされる程だ。

水月は、優雨をかばうように前に出ると、風香を睨みつけた。

「校内での私的な魔法行使は・・・禁止されているはず。
 優雨を傷つけるなら、見過ごせない」

「ただちょっとじゃれあってただけですよ、先輩」

「・・・・・・」

悪びれずにのたまう風香に、水月はますます眼光を尖らせる。

一触即発の気配。優雨が二人を止めに入ろうとすると・・・

「もめごと?もめごと!?マリアも混ぜて~!」

「えっ?」

いつの間にか、少女が優雨の背中に張り付いていた。

「優雨ちゃんの頬って桜餅みたいだよね。いただきま~す」

かぷっ。

「ふにゃんっ!」

少女に頬を甘噛みされ、優雨はくすぐったそうに身をくねらせる。

一方、水月は呆れたようにため息をついた。

「何をやってるんですか・・・校長先生」

「えへへっ」

少女が軽やかに飛び降りる。

「っとと、うぎゅっ!」

かと思えば、バランスを崩し転倒、階段を転げ落ちてゆく!

「だ、大丈夫ですか!?」

優雨と水月が駆け寄るが、少女は何事もなかったようにすっくと立ち上がった。

「あははっ、失敗失敗♪」

彼女の名は、マリア・インフェリアーレ。

見た目こそ齢十も行かない幼女だが、侮るなかれ、
彼女こそ押しも押されもしない、魔法学校の頂点に君臨する魔法使いなのだ。

性格は無邪気そのものだが、唯一水月に土をつけた人物で、
その絶対的な強さは生涯無敗を継続中と噂されている。

「そこにいるのは風香ちゃん!ね、ね、マリアも輪に入れてくれない?」

「い、いえ、私はこれで・・・」

風香もマリアは苦手らしく、そそくさとその場を後にする。

「あっれ~?」

首をかしげるマリアに、二人は苦笑するしかなかった。



訪れ始めた夜。

水月が壊した校舎の窓を魔法で直し、二人は通学路を並んで帰宅する。

「どうして・・・あの子とケンカしてたの?」

「私がいけないの。怒らせるようなこと言っちゃったから」

「・・・本当に?」

「そうだよ。どうして?」

「あんなの・・・人に向けて放つような魔法じゃない。
 私が止めなかったら、どうなるかわからなかった」

「そうかもしれないけど、でも、やっぱり私が悪いよ」

知らないうちに、風香を傷つけてしまったのかもしれない。

そんな思いに至り、優雨の胸がチクリと痛んだ。

「・・・・・・」

溜め込んだ息を水月が吐き出す。

「優雨は自分が悪くないのに、すぐ人をかばう。そうゆうのは良くない」

優雨は時々、危なっかしい所がある。

だからこそ、お守りとしてこの子を傍においていたのに。

「・・・真っ先に逃げるなんて、使い魔失格」

水月が肩に乗ったミューイの額を指で弾く。

「いやいや、マスター、あれは無理ですって!
 私がどうにかできるレベルを超えてますよ」

「あなたの今のマスターは私じゃない。それに、もっと早く私を呼べば
 優雨を危険な目に遭わせることもなかった。反省するべき」

鋭い眼光で威圧すると、ミューイは大きく肩を落とした。

「うぅ・・・はぁい」

ミューイがあまりにしょぼんとするものだから、

「ミューイちゃん、私は気にしてないよ。水月ちゃんも、もう許してあげて」

「・・・優雨は甘い」

もっとも、そんな水月も優雨には甘いのだが。

「守ってくれてありがとう、水月ちゃん」

「・・・・・・」

満面の笑みで言われると弱い。

水月はあさっての方向を向く。

彼女なりの照れ隠しなのだ。

最強の少女も、最弱の少女には敵わない。

そんな不思議な絵が、そこにはあった。
  1. 2013/03/09(土) 00:05:07|
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