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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

NHKにようこそ! 二次創作SS ~私の家にようこそ!~ 前編

「岬ちゃん・・・いいか?」

「や・・・優しくしてね、佐藤君」

制服のブラウスのボタンを、一つずつ外していく。

桜色に染まった頬と同じ色のブラジャーと、小さく上下する
二つの膨らみに、俺は思わず唾を飲み込んだ。

岬ちゃんの体は想像していたよりずっと華奢で、
少し乱暴に扱うと簡単に壊れてしまいそうだ。

その右手首にもある痛々しい傷跡も、彼女のこれまでの不幸を物語っている。

「・・・・・・」

本当に、いいのだろうか。

「・・・佐藤君?」

不意に手を止めた俺の瞳を、不安げに岬ちゃんが覗き込む。

俺は彼女と目を合わせられず、顔を背けてしまった。

「大丈夫だよ・・・」

俺の心を見透かしたかのような優しい言葉。

彼女の小さな手が、俺の頬に触れて、そっと撫でる。

「私、佐藤君になら、めちゃくちゃにされてもいいから。
 私は全然平気だから。だから・・・私を見て」

潤んだ瞳で貫かれる。

本当は恥ずかしくて逃げ出したいだろうに、精一杯の力で俺を見つめる。

「キス・・・してほしいな」

本当に、俺はダメな男だ。

こんな時にまで、彼女に気を使わせてしまうなんて。

俺は目を閉じ、岬ちゃんの唇に・・・そっと口付けた。

「えへへ・・・幸せだよぉ」

天使の微笑み。

彼女は、元引きこもりの俺の前に舞い降りてきた天使だ。

彼女の頬に指を這わせ、首筋を撫で、そして・・・









「岬ちゃんのむ、胸を・・・」





















・・・・・・・・・・・・って!

















「こんなもん書けるわけねぇだろぉぉぉおおおっ!」

椅子ごとひっくり返り、敷いたままだった布団の上でのたうちまわる。

「ごめんっ!ごめんよぉ、岬ちゃんっ!」

激しい自己嫌悪に襲われ、近くにあったタバコの灰皿で頭を打ち付けるが、
とても煩悩は消え去ってくれそうにない。

「俺は一体・・・何をやっているんだ・・・」

端から見たら今の俺は変人そのものだろう。

紆余曲折あってどうにか引きこもりを脱出したものの、
俺は新たな問題にぶち当たっていた。

乱高下する感情を抑えるため、ここで少し、自己紹介をしよう。

俺の名前は佐藤達広。24歳のフリーターだ。

ほんの一年前まで俺は、現代における社会問題の一角、
つまり引きこもりだった。

ある暑い夏の日に幻覚に襲われて、対人恐怖症になってしまった俺は、
食料の購入と、何故か続けていた夜の公園への散歩以外、
外へ出ることを止めてしまったのだ。

もちろん働くこともできず、親の仕送りで生活していた俺だったが・・・


ある日、天使に出会ったんだ。


俺を真人間に更生させようと(本当は彼女自身のためでもあったのだが)、
彼女は色々と手を尽くしてくれ、自殺オフ会や倒壊するアパートからの脱出など
様々な困難を乗り越えて、俺はようやくフリーターへとレベルアップできたのだ。

今はコンビニでアルバイトをしながら、後輩から誘われたゲームの
シナリオを書く日々を送っている。


18歳未満禁のゲーム・・・つまり、エロゲーだがな。


「・・・・・・」


俺の最近の問題。

それは、エロシーンを書こうとすると、どうしても彼女の顔が浮かんでしまう
この真っピンクな脳内にあった。

「くそ・・・これじゃまだ引きこもりの方がマシだったかもしれん」

あの日々に戻りたいとは思わないが、自分の腐った思考に嘆息して
枕に顔を埋める。

「元気でやってるかなぁ・・・」

高校中退の彼女は、高等学校卒業程度認定試験をパスして、
今は大学に通っている。

俺に対抗意識を燃やして、俺よりちょっとだけレベルの高い大学だ。

現役大学生と大学中退。完全に立場が逆転してしまったが、
そんなことはもう、どうでもいい。

それよりも、大学生活が充実しているらしく、彼女と会える時間が
減少していることに、俺は一抹の寂しさを覚えていた。

いや、もちろんこんな俺よりも、学業や友人関係に専念する方が
何倍も有意義さ。

「でもなぁ・・・」

「佐藤さ~~~ん!」

入り口のドアが開け放たれると同時に、件の後輩がずかずかと
上がりこんできやがった。

「ど、どうした、山崎・・・」

山崎薫。高校の頃からの付き合いで、俺をエロゲー作りに誘った張本人だ。

一度は実家の農業を継ぐために地元へ帰ったが、妹が見合い相手と結婚し、
その夫が農家を継ぐと決まったので山崎はお役御免となったらしい。

その時の山崎の喜びようは尋常でなく、ビールを飲みすぎて意識を失い
病院に送られたほどだが、ともかく、肩の荷がおりて
今まで通り趣味の美少女キャラに傾倒している、という訳である。

「大変ですよ佐藤さん!来てくださいっ!」

強引に腕を引かれ、半ば拉致された俺は隣の山崎の部屋へと連れ込まれた。

「お、おい、パソコンとか電源つけたまま・・・」

「それ所じゃないですよ!これを見てください!」

山崎の指先、パソコンのディスプレイには、〇チャンネルのとあるスレッドが
表示されていた。

そこには、「知名度こそ低いが、内容は良作なゲーム」とあり、
いわゆる隠れた名作を評価するゲーマー達の集合場所のようだ。

「これがどうかしたのか?」

「どうかしたじゃありませんよ!ほら、僕たちが前に作った
 ゲームのことも書いてあるじゃないですか!」

「なにぃっ!?」

山崎の言うとおり、羅列されたゲームタイトルの中に、
以前俺たちが作ったエロゲーも含まれている。

「マジかよ・・・」

それは数年前の夏のコミケで配布したエロゲーだった。

今になって思えば、俺も山崎も、あの頃は現実逃避のために作っていた
エロゲーだったが、ちゃんと評価してくれた人もいたようだ。

「やっべ・・・すげー嬉しい」

「喜ぶのはまだ早いですよ!ほら、こっちのサイトも見てください」

山崎が次に開いたサイトには「今後が期待されるエロゲー界のサークルたち」という
特集で、その中に、

「SYN」

という、サークルの名前が表記されていた。

「おい、これって・・・」

「その通りです。ついに僕たちが評価され始めたんですよ」

SYNとは、俺たちの頭文字から取った、
俺たちがエロゲーに携わる時に使うグループ名だ。

それぞれ、佐藤のS、山崎のY、そしてあの子のNと言った具合である。

山崎とハイタッチを交わす。

少し掌が痛んだが、悪くない心地よさがあった。

「僕は引き続き夏コミに出すエロゲーの絵に取り掛かります。
 早く佐藤さんもシナリオを仕上げてください」

「おう、任せろっ!」


久しぶりの軽い足取りで自室に戻る俺だが、パソコンの電源が
起動したままだと思い出し、急いで自室に戻る。

何せディスプレイにはあの危ない文章が残ったままだからな。

あんなものはさっさと消去しなければ。

鍵をかけていなかったドアを開け、何気なくやった視線の先に・・・

「うぁぁあああああああっ!」

高速でパソコンへ駆け寄り、パソコンの電源を落とす。

「みっ、みみ、岬ちゃん!?いつからいたの!?」

「・・・・・・」

赤面して、固まってしまっている。

まさか・・・ヒロインに彼女の名前がついた、
あの悶絶もののエロシナリオを読んでしまったのだろうか。

「佐藤君の・・・」


「え・・・?」


「佐藤君の・・・エッチ」


目の前が真っ白になった。


終わった・・・



いんぼ~~~

これは~~~NHKのぉ、陰謀~~~


――――――――――――


「セクハラは、罰金百万円なんだからね!」

「はい・・・」

「まったく、しょうがないなぁ」

土下座と、引きこもり時代に手に入れた言い訳スキルを駆使して
彼女を持ち上げた結果、どうやら鎮火してくれたらしい。

たぶん生来は、ちょっと抜けてるけど素直な子だからな。

「久しぶりだね、佐藤君」

彼女の名前は、中原岬ちゃん。

社会問題まっしぐらだった俺を更生させてくれた彼女こそ、件の天使だ。

すごく明るくて、とても弱くて、いつも一生懸命で、時々情緒不安定で。

そんな彼女に、俺は恋をした。

彼女の存在は、俺の中でどうしようもなく大きく膨らんでいる。

「学校・・・楽しんでいるみたいだな」

「うん!」

その笑顔に作為的なものは感じられない。

心からの、満面の笑みだった。

俺とは違う方向でコミュニケーション能力に問題があった彼女だが、
今はうまくやっているらしく、一安心だ。

「それで、今日はどうしたんだ?」

「そうそう、ねぇ佐藤君。これから私の家に来ない?」

「え・・・」

突然の提案に驚き、間抜けな声が漏れてしまった。

「明日の夜までお父さんたちいないから、二人きりだよ」

「・・・・・・」

「・・・ダメかな?」

そんな上目遣いで見られて、抗えるやつがどこにいるというのか。

「わ、わかった・・・」


岬ちゃんの家は、丘の上にある豪邸だ。

お金持ちのご両親は、昔俺が住んでいたアパートの大家さんで、
岬ちゃんの部屋からはあの公園がよく見えるそうだ。

「う・・・」

玄関で早くも気後れしている俺を、岬ちゃんが不思議そうに見る。

「どうしたの?」

「い、いや・・・何でもない」

岬ちゃんは優しく微笑んで、こう言ったんだ。


「私の家にようこそ!」


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  1. 2013/05/03(金) 22:07:24|
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