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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

オリSS  生まれたときから好きでした!  第1話

本土と橋で繋がれた小さな島に、高見沢という名の学校がありました。

木造校舎の昇降口の傍には、春になれば薄紅色の花を咲かせる一本の木が
寒風に枝を揺らし、付けたつぼみたちが花開く瞬間を待ちわびています。

その木はずっと、傍を横切る子どもたちの成長を見守ってきたのでした。

「さむ・・・」

満月の夜、そんな桜の木に背中を預けて、
少女はコートに包まれた華奢な身体を震わせました。

「ちょっと早く来すぎちゃった」

待ち合わせの時間まであと10分。

「そもそもこんな寒空の下で女の子を待たせるなんて最低じゃない?」

自らこんな場所を指定したことも忘れて、約束の時間より既に20分も前から
ここにいる自分を棚にあげて、彼女は視線を足元に下ろし唇を尖らせます。

「湊のばーか・・・」

「・・・ばかで悪かったな」

理不尽な罵倒に、少しだけ非難が混じった少年の優しい声色。

彼女は顔をあげ、その瞳に彼の姿を捉えて頬を緩ませます。

「ばかでも大好きだよ、湊」

「・・・ありがとよ、明希」

やれやれと少年は肩をすくめます。

彼の名前は高槻湊(たかつき みなと)。

そして彼女の名前は、藤林明希(ふじばやし あき)。

幼馴染で・・・恋人同士の間柄です。

「お前、いつからここにいるんだ?」

「30分前から!」

「・・・ばかはおまえだ」

身体を震わせる明希ちゃんを見ていられず、
湊くんは彼女の首元にマフラーをかけてあげました。

「えへへ・・・暖かい」

「ったく・・・」

むう・・・お二人さん、いちゃいちゃしすぎじゃありませんか?

「だって早く湊と会いたかったんだもん」

「・・・・・・」

なっ・・・なんて魔性の女なのでしょう。

あんなことを言われたら、純情な湊くんが照れないわけがありません。

予想通り、湊くんは明希ちゃんから視線を逸らし、背中を向けてしまいました。

「どうしたの?」

「何でもない。さっさと行こうぜ」

ほら、やっぱり。

気の利いた言葉を返せない湊君はあの頃のまま、全然変わっていないようです。


それが嬉しくて。


ちょっとだけ寂しくて。


痛むはずのない私の胸に、チクリと棘が刺さるのです。





※のんびり&気まぐれ更新。もちろん完結するかは甚だ怪しいですw
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  1. 2015/02/01(日) 23:26:02|
  2. 生まれた時から好きでした!
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