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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~   プロローグ

ED後のジャクリとクロアの後日談物語です。


本文の前に・・・


・二次創作なんて認めない

・オリジナルキャラ・オリジナル敵なんて許さない

・アルトネリコ1、2の内容のネタばれはダメ絶対!





・・・当てはまる方は、お戻りくださいませ。






それでは始めます。楽しんでいただけたらと思います。






絶望の中を、ずっと一人ぼっちで生きてきた。

同族を攻撃する詩魔法を紡がされ、断れば地獄の仕打ちが待つ。

「やめて・・・そんことしないで!すごく痛いの・・・」

そんな願いが届くはずもなく、私の意思など簡単に踏みにじられる。

私の体に接続されたコードから液体が注入され、
気持ち悪さとおぞましさが全身を駆け巡る。

「嫌っ!いやああああああああああっ!!」

苦痛に耐え切れず、私の意識が途切れる。



私を私たらしめる、感情。



彼らはそれを、躊躇なく消去しようとする。

「いいか、ミュール。お前はレーヴァテイルではない」


「お前は、“人形”だ」


「やめて・・・私を壊さないで・・・」

どうしてこんなことをするの?

私が謳いたいのは、傷つける攻撃魔法なんかじゃない。

みんなを幸せにする、優しい詩なのに。


人間は、そんな残酷な生き物なの?


「違うよね?」

私の中に芽生えた人間への不信を必死に振り払う。

私は、信じていたい。


人間とレーヴァテイルは、手を取り合えるって。


「そうだよね、アヤタネ・・・」








時は流れ――――――





「遂にミュールの感情を消すことができました。
 我々の命令に忠実に従います」

「よし、シルヴァホルンに連れて行け。レーヴァテイルどもを
 殲滅させるのだ」

シルヴァホルン。アル・トネリコの中腹に位置するホルンの形状をした施設。

レーヴァテイルが謳い、そのエネルギーを魔導力へと変換することができ、
人々はその恩恵を受けて生活している。

私の役目は、そこで都市のシステムを効率的に機能させることだ。


塔内へと続く岸壁のシルヴァプレートを上っていくと、人間と
レーヴァテイルたちが応戦していた。

周囲には人間とレーヴァテイルの亡骸が倒れており、血の臭いに満ちている。

「・・・・・・」

「忌々しいレーヴァテイルどもめ!ミュール、やつらを攻撃しろ!」

彼らの望みどうり、私は詩を紡ぎ始める。

怒りと絶望と憎しみを糧に、巨大な黒いエネルギーの球体を作りだした。

「よし、殺せ!」

「ねぇ・・・」

「むぅ?」

「私、あなたたちに感謝してるの。
 おかげでとても大切なことがわかったから」

「貴様、何を言っておる!」


「これはお礼よ!永久に眠れ!」


詩魔法を、人間たちに向けて放った。

「なっ・・・がぁっ!」

ニンゲンたちは詩魔法に飲み込まれ、跡形もなく消滅する。

「・・・・・・」


私は初めて、ニンゲンを殺害した。











「ミュール、レーヴァテイルの避難が済んだわよ」

「ご苦労様」

「あなたの言うとおりに、抵抗する子は気絶させて運んだけど、
 どうするつもり?」

「すぐにわかるわ。私は今からアル・トネリコへ向かうから指揮をお願い」

「任せて」





プラズマベル。アル・トネリコの外壁上に存在する、巨大な光球。

空中の大陸“ホルスの翼”を浮遊させる動力源だ。


私は、あれを破壊する。


その行為によりもたらされる結果は、当然理解している。

多くの者が苦しみ、泣き叫び、私を恨むだろう。

それでいい。

私も、お前たちを生涯許さない。

だから・・・・・・



「さよなら」



プラズマベルめがけて、詩魔法を放った。










その後の行動は、迅速だった。

“ホルスの翼”の半分が落下した混乱に乗じて、レーヴァテイル・オリジンが
監禁されている研究所を襲撃。シュレリア様を保護した。



しかし・・・・・・



「ミュール、あなたはなんてことを・・・」

悲痛に暮れ、うつむくシュレリア様。

「ニンゲンとレーヴァテイルは共存できません。
 ニンゲンは滅ぶべき劣悪種です」


「違うっ!」

初めて見る、明確な怒りを表したシュレリア様の剣幕に、
私は思わず身じろいだ。

「確かに、時に人は相手を傷つけるわ。でも、そんな悲しい、
不器用な人たちだけじゃないの。正面から向き合えば、
きっと私たちはわかりあえる、私はそう信じてる」

わからない。なぜオリジンが、娘のような存在である
レーヴァテイルを虐げるニンゲンを庇うのか。

「綺麗事ですね。レーヴァテイルを道具としか思ってないあいつらと、
仲良くできるはずがありません」

現にシュレリア様も、こんなところに幽閉されていたじゃないか。

「だから滅ぼすの?」

「はい」

「ダメよ。新しい悲劇を生み出すだけ。また誰かが泣くことになるわ」

くだらない。

「かわいそうなシュレリア様。ニンゲンに毒されてしまったのですね」

今すぐ、ニンゲンを抹消しよう。

オリジンは、私の理想郷、レーヴァテイルだけの世界
“レーヴァテリア”に必要な存在だ。

彼女の目を覚ましてあげなければ。

「ミュール」

「なんですか?」

動かしかけた足を止める。





「あなたは・・・一度も誰かに愛されたことがないのね・・・」





その言葉は。





私を、壊した。





「黙れっ!」




血が出るほど唇をかみ締め、シュレリアをにらみつける。

「私を愚弄するな!なにが愛だ!そんなもの、まやかしだ!」

「きっとあなたを受け止め、あなたを愛する人が現れる!
そのためにも、人間を滅ぼしてはダメよ!」

「うるさい!」

「それでもまだ、あなたが人を傷つけると言うのなら・・・」

「―――――――――っ!?」




「私があなたを止める!」



シュレリアの神がかり的な詠唱速度で、詩魔法が瞬時に発動した。









その後、私は数百年もの間、封印されることになる。





憎かった。


そして、許せなかった。


だから、壊してしまおうと思った。


全ての、ニンゲンを。


レーヴァテリア――――レーヴァテイルだけが住む、私が望んだ理想郷。


それを求めて私がした行動に、後悔などしていない。


当然だ、ニンゲンは滅ぶべき存在なのだから。


それなのに―――――――――


いつのまにか、私の胸の奥に、特別な感情が生まれていた。


悲しいまでに狂おしく、切ないまでに愛おしいこの気持ち。





それは、きっと―――――――――――――
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  1. 2011/09/25(日) 23:54:46|
  2. アルトネリコSS(修正中)
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アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第1話

プロローグ

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「着陸するわよ」

「こんな所に?空港とかじゃないのか?」

「だってこの飛空艇、奪ったやつだもの。持ち主に見つかったら面倒でしょ」

「・・・・・・」

果てしなく続くかに思えた死の雲海を抜け、着陸した飛空挺から
俺たちは大地に降り立った。

「ここが、ソル・シエール・・・」

一面に緑が広がり、草原を爽やかな風が吹き抜ける。

降り注ぐ陽光は暖かく、踏みしめた大地の硬さは長旅の終わりを告げ、
優しい小鳥の歌声が俺たちを迎えてくれていた。

そして、大陸の中心で遥か空へと伸びる、一本の塔。

「あれがアル・トネリコ第1塔、エオリアの塔よ」

「エオリア?」

「管理者の名よ。普段は別名を名乗ってるけどね」

ソル・シエールのアル・トネリコは、不思議な形状をしていた。

用途がわからないホルンが塔に巻きついていたり、
複数の巨大な板が塔を囲んで浮いている。

「ここが、ミュールが生まれた場所なんだな」

「まぁね」

ミュール・テイワズ・アルトネリコ。

俺がずっと一緒にいたいと願う、世界で一番大切な存在。

流れるような黒い長髪を風になびかせ、透き通りそうなほど白い肌は
簡単に壊れてしまいそうな儚さが逆に彼女の美を引き立てている。

本人曰く「見られても恥ずかしくない体」を黒のボディスーツで包み、
気だるげに開いた瞳はどこか儚げだ。

いつも無表情の彼女は、笑わない。

無理に笑おうとすると、慣れない頬の筋肉がつるから。

しかし、いつか見せてほしいと思う。

彼女の精神世界で、俺だけに向けてくれた純真で人懐っこい、
かけがえのない、あの笑みを。

「さ、行くわよ」

「どこへ?」

「アル・トネリコ。管理者に会いにね」



塔内は複雑な構造をしており、まるで迷宮の様相をなしていた。

無数の魔物が生息しており、時折戦闘に発展して進行を拒むが、
幾たびの死闘を経験してきた俺たちの敵ではない。

「今更だけど、スピカも連れてこなくてよかったのか?」

スピカとは、俺が居たメタ・ファルスで出会った薬屋を営む女性だ。

元々はソル・シエールの人間であり、ミュールと共に
メタ・ファルスに訪れたらしい。

「あの女は自力で帰ってくるわよ。私が言うのもなんだけど、あれは恐ろしい女よ」

夢は裏世界の女王と言ってたものな。

「そういえば、この塔の管理者ってどんな方なんだ?」

「すごく子どもっぽいわ。極度の方向音痴ですぐ迷子になるし、
 威厳なんてあったもんじゃないわね」

「そ、そうなのか」 何だか心配になってくる。

「だから、からかいがいがあるんだけどね。そうでしょ、シュレリア?」

「失礼なことを言わないでください」

広い空間の中央に、少女がいた。

白くきめの細かい肌。前を見つめる無垢な(今は抗議の色を湛えている)瞳。

光に照らされた長髪はふわりと揺れ、薄紅色の唇が微かに震える。

華奢な身体を白いハイレグで包む、整った顔立ちの美少女だ。

「やっと帰ってきたと思ったら、いきなり悪口ですか」

シュレリアと呼ばれた少女が、頬を膨らませる。なるほど、子どもっぽい。

しかし、シュレリア様は目を丸くした。

「みゅ、ミュールが服を着てる・・・」

「・・・・・・」

「ミュール、熱でもあるんですか?」

「うるさいわよ」

半信半疑だったが、この反応を見る限りソル・シエールでは
常に全裸でいたというミュールの話は本当のようだ。

「ところで、そちらの方は?」

「紹介するわ。アルシエル一の馬鹿よ」

「おい・・・」

あんまりな紹介に閉口する。


「だって、私に好きだなんてほざくやつは、広い世界であなただけよ?」


「ええっ!?」

シュレリア様が素っ頓狂な声をあげる。


「クロア・バーテルです。メタ・ファルスから参りました」


「えぇ~~~~~~~~~つ!?」


今度は絶叫。俺を指差して瞬きを繰り返し、口が開きっぱなしだ。

驚きのあまり後ずさったシュレリア様は、足が絡まり転んでしまった。

「だ、大丈夫ですか!?」  近づいて手を貸す。

「あ、ありがとうございます」

立ち上がったシュレリア様は、まじまじと俺を見る。

「ミュ、ミュールが男の方を連れてくるなんて・・・」

「ちょ、ちょっと勘違いしないで。勝手についてきたのよ」

頬を赤く染めるミュール。俺が同行した理由は単純明快だ。

「ミュールと一緒にいたかったからな」

「やめなさい!それよりアヤタネはどこにいるの?
 久しぶりにあの子に会いたいわ」

「アヤタネは、ライナーたちとプラティナにいると思いますけど」

「アヤタネ?アヤタネがソル・シエールにいるのか?」

ミュールの精神世界で出会った、彼女の心を護る存在。

彼は、自らをアヤタネと名乗っていた。

「心の護とはもちろん別人よ。でも、どっちも私にとって大切な・・・
 子どもみたいな存在ね」

珍しく、優しく微笑むミュール。きっとミュールにとって
かけがえのない人なのだろう。

「そうか・・・」 ちょっとだけ妬けてくる。

「私はアヤタネたちに会ってくるわ。クロア、あなたはシュレリアに
 色々と聞かせてあげなさい」

「あ、ああ。後で俺も行くよ」

「勝手になさい」

ミュールが去ると、シュレリア様は柔和な笑みを浮かべた。

「ミュールは、とても素敵な方に出会えたのですね」

「え?」

「あの子のあんな楽しそうな表情を初めて見ました。
 きっとあなたを心から受け入れたのでしょう」

心から・・・か。その言葉は、人間とレーヴァテイルの間では
とても深い意味を持つ。

「俺、ミュールのコスモスフィアにダイブして、わかったんです。
 心の底から人間を憎んでいること・・・それなのに、
 人間を傷つけてしまった自分を許せないことを」

「・・・・・・」

「ミュールは人間である俺に、全てを見せてくれました。だから俺も、
 彼女の全てを受け入れたいと思ったんです」

シュレリア様は頷き、悲しげにうつむく。

「もっと早くあなたのような方に出逢えていたら、あの子は・・・」

「・・・・・・」

「・・・いえ、やめましょう。ミュールの罪は、止められなかった
 私の罪でもあります。私たちはそれを背負って生き続けねばなりません」

シュレリア様は顔を上げて微笑み、手を差し出した。

「クロア・バーテル。アル・トネリコの管理者として、
 そしてソル・シエールの代表として、私はあなたを歓迎します」


「ようこそ、ソル・シエールへ」


「ありがとうございます」

シュレリア様の手を、しっかりと握った。

「そうだ、ライナーたちにあなたのことを紹介しましょう。
 私がプラティナまで案内しますから、ついてきてください」

「その、ライナーとは?」

「管理者である私と、プラティナを守護する騎士の者です。
 きっとすぐ打ち解けることができますよ。プラティナに着くまでの間、
 メタ・ファルスでの出来事をお聞かせください」

「わかりました」

「あ、それと一つ、どうしてもお聞きしたいことがあるんですけど」

「なんですか?」


「どうやって、ミュールに服を着せたんですか?」


「・・・・・・」


俺は深いため息をついた。





「そうですか。ミュールがあなたたちに協力を・・・」

世界中を旅したこと。その過程で、様々な人と出会ったこと。

全ての人々の想いが実を結び、大陸創造という花を開いたこと。

そして何より・・・ミュールと出逢えたこと。

俺はシュレリア様に全てを話した。

「大陸を造るほどのヒュムノス、それを可能にした想いとは、
 すばらしいものですね」

俺は拳を握り締め、力強く頷いた。

「ところで、シュレリア様?」

「なんですか?」

「さっきからずっと、同じところを歩いている気がするんですけど・・・」

「えっ!?」

シュレリア様は明らかに動揺し、乾いた笑いをこぼす。

「や、やだ、何を仰るんですか?大丈夫、こっちであって・・・あら?」

「・・・最初の所に戻ってきてしまいましたね」

失念していた。シュレリア様は方向音痴だと、
ミュールが言っていたじゃないか。

「迷子ですね・・・」

「・・・・・・」


結局、俺たちがプラティナにたどり着いたのは、二時間後のことだった。






宿屋の前にいたミュールは、疲れきった俺たちの表情で察してくれたようだ。

「災難だったわね、クロア」

「・・・ああ」

早く道を覚えよう。もう二度と、シュレリア様に道案内を
頼まなくてすむように。

「ライナーたちは、ヴィオラ森にモンスター退治に行ったわ」

「あそこの魔物は、比較的大人しいのでは?」

「そのはずなんだけど、カルル村の住人が何人も襲われたらしいの」

「そんな・・・」

「俺たちも行こう!」

しかしミュールは首を振った。

「私は行かないわよ」

「・・・どうしてだ?」

「被害者がレーヴァテイルなら放っておけないけど、人間がどうなろうと
 知ったことじゃないもの」

「ミュール・・・」

ミュールはまだ、人間を恨んでいる。

彼女が人間につけられた傷は、あまりにも深く、大きい。

ミュールがそう言うのも、当然なのかもしれない。

でも、それでも俺は・・・

「ミュール」

「何よ」

「俺は君が好きだ」

「なっ・・・」

頬を紅潮させ、ミュールは明後日の方向を向く。

「だから、待ってる」

「ばっ、バカじゃないの?意味不明だわ」

その照れ隠しの台詞が、可愛らしくてたまらない。

「そんな俺だから、受け入れてくれたんだろ?」

「そ、それ以上言ったら、手加減なしの攻撃魔法をぶつけるわよ!」

殺気を感じたので、止めておこう。照れ隠しで殺されたらたまらない。

「わ、わかったわよ。行けばいいんでしょ。でも勘違いしないことよ。
 あなたが頼りないから、私も行くんだからね」

「ああ、ありがとう」

「・・・ふん」

「あの~~~、お二人とも。私のこと忘れてません?」

「あ」

もう一人いることを、すっかり忘れていた。

「す、すみません」

「もういいです。さ、ネモを経由してカルル村へ行きましょう」




カルル村に到着したのは、夕刻の頃だった。

カルル村は小さな村で、のどかな風景が広がっている。

ここからヴィオラ森へと向かえるらしい。

「だいぶ遅くなってしまったな」

「シュレリアのせいね」

「くぅ・・・」

反論しようとしたシュレリア様だが、
突如村に響いた悲鳴によって中断される。

「なんだ!?」

「あっちから聞こえてきたわ」

「よし、行こう!」





広場に、負傷した男性がうずくまっていた。

「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ・・・」

その前方に、血に湿った牙を鳴らす、巨大な獣がいた。

「魔物がこんなところまで・・・!」

男性の前に立ち槍を構える。

「クロアさん、こんな民家のすぐ傍では、私たちは謳えません。
 あのモンスターの相手をお願いします」

「わかりました!」

飛び掛ってきた獣を、槍で受け止める。

「させるか!」

着地した獣に槍を払い、肉が裂け悲鳴を上げて獣が怯んだ。

その隙を逃さず、俺は獣の急所を突く。

深く突き刺さり、獣は断末魔をあげ、やがて絶命した。


「大丈夫ですか?」

「助かりました。あなた方は、私の命の恩人です」

男性の傷はだいぶ治癒していた。シュレリア様の回復魔法の効果だろう。

「本当にありがとうございました」

男性は頭を下げ、去っていった。

「あ、ライナーたちが戻ってきましたね」

遠く村の入り口で、少年たちが手を振っていた。
  1. 2011/09/27(火) 02:28:07|
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アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第2話

オリカというレーヴァテイルの家に宿泊することにした俺たちは、
それぞれ自己紹介をした。

「クロア・・・お前は恐ろしいやつだな」

ジャックと名乗った青年が言った。

緑色の帽子とマントを羽織り、右腕に義手を付けている。

「あのミュールを落せる男がいるとは思わなかったぜ」

「馬鹿なことを言わないで頂戴」

即座に反応したミュールは、ジャックを睨みつける。

しかしジャックはそれを無視して、俺に問いかけた。

「いったい、どんな手を使ったんだ?」

「だから・・・・・・」

「あ、それ俺も聞きたい!」

割り込んだのは、金髪の少年、ライナー・バルセルトだ。

シュレリア様を守護するエレミアの騎士であり、彼をリーダーとして
ミュールと闘ったらしい。

「今だって、シュレリア様があんなに言っても聞かなかった服を着てるしさ」

「・・・クロアがうるさいからよ」

「私の言うことは聞かなくても、クロアさんには従うんですね・・・」

ジト目でシュレリア様はミュールを睨んだ。

「ちょっとライナー、あまり興味本位で詮索したらダメよ」

ミシャ・アルトセイク・リューン。胸の開けた青い服を着て、
頭には太鼓のような髪飾り。

切れ長の瞳が彼女の美貌を引き立て、グラマラスな体つきをしている。

彼女もレーヴァテイルで、ライナーの幼馴染らしい。

「アル兄ぃもよ。クロアが困ってるじゃない」

「あ。いや、俺は別に・・・」

「でもよ、ミシャは気にならねぇのか?」

「え!?それは・・・えと・・・」

ちらっとライナーを見るミシャ。

「アヤタネはどう思う?」

銀の長髪。赤く染められた鎧を着けて、腰には二振りの刀。

そして、いつも崩さない微笑み。

ミュールの横にいる少年は、俺が彼女のコスモスフィアで出会った
心の護にそっくりだった。

「僕は母さんが幸せになってくれれば、それで十分だよ」

「アヤタネ、余計なことは言わなくていいわ」と、ミュール。

「クルシェは何してるんだ?」

クルシェと呼ばれた少女は、俺の武器を手に取り眺めていた。

彼女は、機械に通じるメカニックらしい。

「これ面白いね。槍としてだけじゃなくて、銃の機能も付いてる。
 わ、バーニアまで!乙女心に溢れてるね」

クルシェ・・・お前もか。その乙女心は、やっぱり俺にはわからない。

「メタ・ファルスはこんな武器を売ってるの?」

「いや、俺のは知り合いの武器屋の女の子に作ってもらった特注品なんだ」

「シンシアね。あんなぶっとんだ子、初めて見たわ」

「否定はしないけど、お前に言われたくないと思うぞ」

俺のツッコミは完全に無視して、ミュールはクルシェに言った。

「でも、うかつに触らないほうがいいわよ。バーニアをフルパワーにしたら、
 壁を突き破って死の雲海まで飛んでいくからね」

青ざめたクルシェは、さっと手を離した。

「気をつけろよクルシェ。壁を修理するの、大変なんだからな」

「えと・・・ライナー、そっちなの?」

「そんなこたぁどうでもいい。どうやって告白したんだよ?」

改めて聞かれると恥ずかしいな。しかし、大切な人に想いを伝えた
あの瞬間を、否定も誤魔化しもしたくない。

だから、正直に言った。



「ヒュムノス語を使って、詩を謳ったんだ」



「ええ~~~~~~~~~~っ!?」 


身を乗り出すミシャとシュレリア様。

「お前すげぇな・・・」  

ジャックすら、目を白黒させて呆然としている。

「それに比べて・・・」  

ため息混じりにライナーを見るレーヴァテイル二人。

「な、なに?」

困惑するライナーだが、その様子が彼女たちの怒りを買ったらしい。

「知りません!」  

二人の声がシンクロした。

「もういいでしょう?それより、ヴィオラ森はどうなってたのよ」

「おお、それが見たことない凶暴な魔物がわんさかいて大変だったぜ」

「ジャックは油断してやられそうになったんだよね」

「うるせぇ」

凶暴なモンスター、か。俺が倒したやつもその仲間だったのだろか。
一般人では手も足も出ないだろう。

「念のため、ラードルフさんに報告したほうがいいかもしれませんね」

俺とミュール以外のみなが頷いた。

ラードルフって誰だろうな。






運ばれてきた料理を食べ終わる。

「デザートはドッコイパへと焼肉ソーダだよ」

オリカが持ってきたのは、巨大なパフェと・・・

「焼肉ソーダ?」

ソーダが入ったコップのふちに、焼肉が乗っかっている。

「私の特製なんだよ」

「へぇ、変わってるな」

「あれ、意外と驚かないのね。私は初めて見た時、衝撃だったけど」

目を丸くするミシャ。

「ソーダインバーガーを知ってるからな。これくらいじゃ・・・ったぁ!」

テーブルの下で、ミュールが俺の足を思い切り踏みつけた。

「ソーダインバーガー!?な、なにそれ」

「い、いや、何でもない」

涙目になって否定する。

ちなみにソーダインバーガーとは、バーガーにソーダを挟んだ
ミュール特製トンデモ料理である。

正直アレに比べたら、焼肉ソーダなんて可愛いものだ。

「そうだ、忘れてたわ。ライナーにお土産があるのよ」

そう言ってミュールは、小さな箱を取り出した。

「はい、ライナー」

「ミュ、ミュールが俺に?」

おっかなびっくり、お礼を言いつつ箱を開けるライナー。

中から出てきた物は・・・

「オボンヌじゃないか!」

喜色満面で取り出す。だが、不意に眉を寄せた。

「あ、あれ?なんかヘンだぞ」

「ご明察。それはオボンヌじゃなくて、メタ・ファルス名物オボンタよ」




「パクリじゃないかっ!!!」




「きゃっ!」

ライナーは食卓をドンっと叩く。まるで鬼のような形相だ。

「誰なんだこれを作ったやつは!叩っ切ってやる!」

「クロア、説明してあげなさい」

「え、えっとだなライナー。それは銘菓オボンタと言って、
 メタ・ファルスでは昔から親しまれていてだな」

「つまり、オボンヌこそオボンタのパクリなのよね」

「そうは言ってないだろ!?」

わざと火に油を注ぐミュール。

「メタ・ファルスに行ってくる!」 

ライナーは剣を抜き、駆け出した。

「ばか、落ち着けって!」 

ライナーを羽交い絞めして止めるジャック。

「第一、お前メタ・ファルスの場所知らないだろうが」

「あ・・・・・・」 

しゅん、とライナーは縮こまる。

「ライナーは本当にオボンヌが好きなんだな」

「ライナーは僕が世話しなければ、1ヶ月をオボンヌだけ食べて
 生活する人だからね」

アヤタネは微笑みを崩し、ため息をついた。どうやら相当苦労したようだ。

「私、なんでこんなオボンヌ男に負けたのかしら。腹立たしくなってくるわ」

「ご、ごめん」 なぜか謝るライナーであった。

「ところで、母さんとクロア君に聞きたいことがあるんだけど」と、
 アヤタネが言う。

「何よ?」





「母さんとクロア君は付き合ってるんだよね。それなら、
 僕はクロア君を“父さん”って呼んだ方がいいのかな?」




・・・ソーダを飲んでいた者全員が、吹き出した。







「ふぅ、疲れたな」 先に部屋に入った俺は、ベッドに横になった。

あの後、メタ・ファルスのことについて質問攻めにあったのだ。

「俺もソル・シエールのこと色々聞きたかったんだけどな」

まぁいいか、と思い直す。自分の目で、この世界を見てみよう。


ミュールと、一緒に。


「ん?」

部屋の扉がノックされ、扉を開けるとそこにいたのは意外な人だった。

「シュレリア様?」

「夜分遅くにごめんなさい。お話したいことがあるのですが、
 よろしいですか?」

「はい、どうぞ」 シュレリア様を招き入れる。

「お話とは何でしょうか?」

「クロアさん、エレミアの騎士になりませんか?」

「騎士に?」

「失礼ですがクロアさんは、まだソル・シエールに来られたばかりなので
 生活のあてが無いのではと思います」

そう、それは大きな問題だった。向こうから持ってきたお金はあるのだが、
いずれそれも尽きる。

生活のために、働こうと思っていたのだ。

「騎士になれば衣食住は保障されます。当然それなりの危険も
 付きまといますが・・・」

「なるほど・・・どうすればなれるのですか?」

「実技と筆記の試験を受けねばなりません。
 クロアさんはかなり腕がたつご様子なので実技は大丈夫でしょう」

「問題は、筆記か」

学力には自信があるが、今日訪れたばかりの俺にソル・シエールの歴史を
問われてもお手上げだ。

「ここだけの話ですが、実は筆記はそんなに難しくありません。
 ライナーは一夜漬けでパスしたそうですし」

「・・・そんな簡単に通っていいんですか?」

「ま、まぁ知識だけでは平和を守ることはできませんから」

・・・みもふたもないな。俺は大聖堂の騎士になる時、
一年前から勉強してたのに。

それはともかく、悪くない提案だろう。騎士なら、
向こうにいた頃の経験も役立つはずだ。

「俺、試験を受けます」

シュレリア様はパッと顔を輝かせる。だいぶ俺を買ってくれてるようだ。

「それでは後日、プラティナに来てくださいね」

「わかりました」

「クロア、入るわよ」 再び扉が叩かれ、入ってきたのはミュールだった。

「なっ・・・・・・!」 

シュレリア様の姿を認めたミュールの顔が引きつる。

「二人でこんな遅くに何をやってるの?」

「ま、待て・・・変な誤解するなよ?」

「私、何も言ってないじゃない。やましいことでもあるのかしらね」

貼り付けた笑みが恐ろしい。

「私がクロアさんに騎士にならないかと勧めたんです」

「・・・それだけ?」

「ああ」

「本当に?」

「心配しなくても、クロアさんを盗ったりしませんから」

「そ、そんなこと聞いてないわよっ!」

顔を真っ赤にしてあわてふためくミュールに、
俺とシュレリア様は笑いあった。

「それで、どうしたんだ?」

「も、もういいわ。それじゃ」

「あ、ミュール」

部屋を出て行く背中に声をかける。

「おやすみ」

「・・・おやすみなさい」 

扉がしまり、足音が遠ざかっていった。

「それでは私もこれで」

「はい、おやすみなさい」  

シュレリア様も一礼して出ていった。





「ミュール、待ってくださいよ」

うるさいのが後ろから追いかけてきた。

「断るわ」

「まだ怒ってるんですか?」

シュレリアは私の前に回りこむ。

「怒ってなんかないわよ。それよりあなた、
 クロアを騎士団に誘うなんて何を企んでるのよ」

「企むって、ミュールじゃないんですから・・・」

「まさかあなた・・・クロアが騎士団にいれば、そうそう私も
 悪事を働かないだろう、なんて思ってないでしょうね?」

「あら、何のことですか?」

「・・・まったく」

私はため息をついた。しかしシュレリアは真剣な表情で、私を見つめる。

「ねぇ、それより・・・クロアさんは、昔のことを知ってるんですか?」

「・・・さぁ、ね」

恐らく、クロアが知っているのは、彼が私のコスモスフィアで見た断片的なことだけだろう。

私が過去に犯した大罪・・・それは、まだ知らないはずだ。

「・・・話すんですか?」

「そんなわけないでしょう?私には何のメリットもないし、
第一思い出したくもないわ」

しかし、忘れようとしても、目を背けようとしても、過去は常に付きまとう。

いずれ、クロアは知ってしまうだろう。

その時彼は、私を軽蔑するだろうか?

「っ・・・」  

胸が、痛い。

私、クロアが離れていくことを恐れている・・・?

「・・・らしくないわね」 

自嘲する。 

かつては魔神と呼ばれた私が、たかが一人の人間に頭を悩ますとは。

「クロア・・・」

つぶやきは、闇に吸い込まれていった。
  1. 2011/09/30(金) 06:37:40|
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アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第3話

朝日が昇り始めた早朝、私は足跡を殺して廊下を歩いていた。

にやけてしまう頬を引き締め、彼の部屋の前で止まり、扉を開けると・・・


「あ、おはようミュール」



「・・・なんで起きてるのよっ!」



逆上した私は、クロアにつっかかる。

「せっかく起こしてあげようとした私の優しさが台無しじゃない!」

彼の無防備な寝顔を、見つめてみようと思ったのに。

「な、なんだよそれ!?」

「うるさい!このバカっ!」

「理不尽すぎるだろ!」

クロアの胸をポカポカと叩く。彼の方が背が高いから、
顔を上げてクロアをにらみつける。

「あ・・・」

目の前に、クロアの顔があった。彼が少しかがめば、
唇と唇が触れてしまいそうだ。

「~~~~~~~~~~っ!」

彼を突き飛ばすようにして離れた私は、クロアに背中を向ける。

「も、もういいわ。許してあげるわよ」

「そ、そうか」

私の顔、赤くなってなければいいが・・・

「ねぇ、今日はこれからどうするの?」

「街に行こうと思う。この世界をもっと見てみたいんだ」

「そう。それなら私が案内してあげるわ」

「ああ、頼む」




「・・・どうしてあなたたちまでついてくるのよ」

ライナーたちはプラティナに帰ると思っていたが、
いちいち追いかけてきたのだ。

「みんな一緒に回ったほうが楽しいじゃないか」

人の気も知らないでクロアが言う。

「シュレリア、塔の管理者が遊んでいていいの?」

「時には息抜きも必要ですから」

「あら、そう」

「はい」

本当は、自分とライナーの関係が進展しないものだから、
仲むつまじくする私とクロアがうらやましいのだろう。

それくらいお見通しだ。

「クロア、ここがネモだよ」

空港都市ネモ。ホルスの翼で一番人口が多い巨大都市。

産業等の発展は、街に繁栄をもたらし、人々は裕福に暮らしている。

「まずはラードルフに会いにいこう」

「なぁ、ラードルフって誰だ?」

「あぁ、ごめん。クロアは知らないんだったよね。ラードルフはね・・・」




エル・エレミア教会。

エオリア・フレリア・ティリアからなるエレミア三謳神を信仰しており、
慈善団体としても活動していることから民衆の人気は高い。

そして、最高位である司祭を務めるのが・・・

「ラードルフ!」

弱冠26歳にして司祭まで上りつめた、ラードルフ・シュナイゼンである。

「みんな、久しぶりだな」

彫りの深い顔立ちに、司祭に似合わぬがっしりした体格。

優しそうな立ち振る舞いとは裏腹に、誰よりも胸に熱いモノを持ち、
先の騒乱で私と対決した一人でもある。

私と目があったラードルフは、驚きを露にする。

「ミュ、ミュールが服を着ている・・・」

「その反応、もう飽きたわ」

最初はおもしろかったが、会うもの全てに同じ反応をされると、
正直うんざりだ。

そんなに、服を着ている私が珍しいのだろうか。

・・・まぁ、彼らの前では常に全裸だったけど。

「見知らぬ顔もいるな。その少年は?」

「はっ、クロア・バーテルと申します」

クロアは律儀に騎士のポーズをとる。真面目なやつ。

「そんなかしこまらなくてもいいさ。それより君のその鎧は?」

「これは、メタ・ファルスで騎士を務めていた頃のものです」

「メタ・ファルス!?」

クロアはかいつまんでラードルフに説明する。

「いやぁ、驚いたな。そんな遠いところからの客人とは。
 色々と聞いてみたいものだ、見たところ君も、槍使いみたいだしな」

「司祭」

近づいてきた騎士がラードルフに耳打ちすると、
ラードルフは険しい顔つきになった。

「・・・そうか。わかった、引き続き調査を頼む」

「はっ」

「何かあったのか?」

「最近、新種の魔物が次々と現れだしてな。被害も報告されているのだが、
 どこから来たのか未だ掴めていないんだ」

「手がかりになるかわからないけど、俺たちもそいつらと戦ったぜ」

「本当か。詳しく聞かせてくれ」




「・・・そうか。村にまで出現したとなると、放っておけないな。
 腕の立つ騎士とレーヴァテイルを数名派遣して警護させよう」

「しっかし、相変わらず忙しそうだな」

「これでも司祭だからな。本当はそんなガラじゃないが、
 みなに推薦されては断れんだろう。とにかくそういうわけだ、
 せっかく来てくれたのに、何のもてなしもできなくてすまんな」

「いや、いいさ。用事は済んだから俺たちは帰るよ。またな、ラードルフ」




「ここは、ほしのせ通りだよ」

大きな通りを人々が行き交い、活気に溢れている。

「な、なぁ、あのお店の店員、こっちを睨んでいないか?」

「あ~、あの人とオリカは、ちょっと因縁があるんだよ」

「因縁じゃないよ。「品揃えが良くないよ、オバサン」って言ったら
 急に怒ったの」

「・・・それは普通、怒ると思うぞ」

クロアとライナーは小声で話す。

「オリカって見かけによらず毒舌なのか?」

「う、う~ん。昔は無口だったけど、変な方向に解放されたみたいだな」

一方オリカは満面の笑みでお店に近づいた。

「こんにちは。今日こそはいいモノ入ってますよね?」

「あら、ごめんなさい。お子様が喜ぶような商品は置いてないんです」

「む・・・」

オリカのこみかみがひくつく。はい、バトルスタート。

「やだ、こっちこそごめんなさい。品揃えが悪くてお客さんがいないから、
 仕入れるお金もないんですよね」

「あなたみたいに、買わないくせにひやかしにくる性悪の対応が忙しくて、
 そんな暇がないんですよ」

天使の微笑で、やつぎばやに毒舌を吐く二人。

「おい、止めなくていいのか?」

「いつものことだから大丈夫だよ。それに二人とも
 本気で言ってるわけじゃないさ・・・たぶん」

周囲の視線が痛い。関係者とは絶対に思われたくないわね。

「ん、あれは・・・」

クロアが通りの外れの一画で見つけたもの。

「みんな、悪いけどあそこに寄ってくれないか?」

それは、小さな洋服屋だった。





「洋服屋にミュールがいる絵って、すごく違和感があるな」

「自分でもそう思うわ。ねぇ、どうしてこんな所に来たの?」

「ミュールに、女の子らしい服を着てもらいたいんだ」

「え?」

思いもよらない返答に、私は一瞬呆けていたかもしれない。

「ミュールは可愛いからさ、もっとおしゃれしてもいいんじゃないかな」

可愛いという言葉に、心臓の鼓動が高まる。

「あ、あなたって時々ものすごいこと言うわよね・・・」


普段は枯れてるくせに、稀に男らしくなるなんて卑怯だ。

クロアの顔を、直視できないじゃないか。

「だからさ、ミシャ達でミュールの服を見繕ってやってくれないかな」

「お安い御用よ。任せて」

「ちょっと、勝手に決めないで。私は着たいなんて言ってないじゃない」

私は、いつも楽な裸でいたいのだ。

「みぅちゃんはきっと何を着ても似合うと思うな」

「そ、そんなことわからないじゃない・・・」

でも、私がおめかししたら、クロアは喜ぶだろうか。

それならば・・・着てあげてもいい、かもしれない。





「みぅちゃんは淡い色がいいよね」

「一応聞くけど・・・ミュールって下着は・・・」

「持ってるわけないでしょ」

「・・・だよね。下着も買わなきゃね」

「嫌よ。服は着てあげるけど、下着は着けないわよ」

「それじゃ意味ないじゃない!スカートとか穿けないわよ」

「見られても恥ずかしい身体してないから大丈夫よ」

「少しは恥ずかしがってよ・・・」






「あ、あんまりジロジロ見ないでよ」

洋服は薄紅色を基調としていて、胸元のリボンがアクセントらしい。

「いいじゃないか、似合ってる」

あまり顔には出さないが、喜んでくれてるようだ。

「そう。よかったわ」

緊張がほぐれ、息をつく。

似合ってない、なんて言われたらへこんでしまいそうだ。

もうちょっと気のきいた事を言ってくれても良さそうだが、
朴念仁のクロアに期待するのは酷よね。

「・・・・・・」

それは分かってるのに、悔しいのはどうしてかしら。

「さ、次に行くところはあそこしかないよね」





「あんたたち、馬鹿じゃないのっ!?」

私の怒声に、オリカたちは意地悪い笑みを返す。

「だって二人はそういう関係なんでしょう?」

「断じて違うわよっ!」

私たちが訪れたのは、市街地にある、巨大な唄石がシンボルの公園だ。

「それじゃ、お邪魔なボク達は他の通りに行って来るよ」

「あ、ちょっと!待ちなさい!」

私の願いも空しく、彼らの背中が離れていった。

残ったのは、私とクロアの二人だけだ。

「まったく・・・」

余計なおせっかいに舌打ちする。

「みんなどうしたんだ?」

この公園は、単なる憩いの場ではなく、デートスポットとしての一面を持つ。

そのことを知らないクロアは、戸惑うばかりだ。

「知らないわよ」

吐き捨てるように言った。

「そうか。とにかく座ろうか」

一つのベンチに、間隔をあけて二人で座る。

「・・・・・・」

鈍感なクロアは気づいてないだろうが、周辺にいる男女は皆カップルだ。

人前でいちゃつかれると気まずいし、忌々しいことこの上ないが、
私とクロアは、微塵もそんな関係には見えないだろう。

良くて、兄妹かしら。

そう考えると、こんな似合わない格好をしている自分がとても
空しく思えてくる。

私、何をやってるのかしら・・・

「さっきは、みんながいてあまり言えなかったけどさ」

「え?」

「その服、本当に似合ってるよ。すごくかわいい」

「・・・本当?お世辞じゃなくて?」

彼の言葉の真意を確かめるために、私は少しだけ彼の傍に寄った。

私の瞳に映る彼は、照れくさそうに微笑んでいる。

それだけで私の胸が、嬉しさで満たされてゆく。

「本当だよ。ミュールを独り占めしたいくらいだ」

こ、こいつはまたこんなことを・・・

どう反応しろというのよ。

「こっちに来てよかった。みんないい人だし、
 ミュールと一緒に居れて嬉しい」

「・・・そう」

内心で安堵する。

私には辛い記憶しかないこの世界だが、
クロアには好きになってほしいと思う。

「ねぇ、本当は私、帰ってきたらすぐ裸になるつもりだったけど止めたの。
 ずっと全裸で歩き回ってた私が、どうしてだか分かる?

「・・・・・・?」

「前にも言ったけど、見られて恥ずかしい身体はしてないわ。でもね・・・」

次の言葉を紡ぐのは、かなりの勇気を必要とした。







「あ、あなたに見られるのは恥ずかしいからよ・・・」






「・・・・・・」

真っ赤になったクロアは、視線を逸らす。

私も、体温が上昇して、沸騰してしまいそうだ。

「だ、だから、今度は・・・クロアが、私の服を選んでよね」

「あ、あぁ・・・」

らしくないついでだ、もう一つだけ言っておこう。

「あの時の返事・・・」

「うん?」

「私のこと、す・・・好きって言ってくれたわよね。返事は、待ってほしい。
 か、考えてみるから」

「・・・わかった。待ってる」

しばらくの間、ずっと私たちはそこにいて、街を眺めていた。
  1. 2011/10/07(金) 02:57:18|
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アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第4話

目標に向かって最短距離で突く。

しかし、外れた槍に手ごたえはない。

「こっちだ!」

視界の右端、振り下ろされた剣を武器の面で受け止める。

「重い・・・!」

気を抜くと押し潰されてしまいそうだ。

「はぁっ!」

武器を両手で支え、渾身の力で振り払う。

槍に密着していた剣が泳ぎ、体勢を崩した相手目掛けて槍を突き出す。

「まだだっ!」

しかし、片足だけで真上に跳んでかわされ、再び剣が振り下ろされる。

その太刀を俺は背後に跳躍してかわし、間合いを取った。

「いい攻撃だったよ、クロア」

にっと笑うライナー。

「ライナーこそ、さすがだな」

入団試験の当日、俺とライナーは手合わせをしていた。

朝に俺の部屋を訪れたライナーが、対決してみたいと誘ってきたのだ。

俺もミュールを倒した人の実力が気になり、その頼みを快諾して今にいたる。

「ライナーがんばれ!」

周囲には応援としてミシャ達の姿がある。

「ライナー、今の危なかったよ」

「ライナー、気をつけてくださいね」

ライナーに声援が飛ぶ。

「・・・みんなライナーに応援が偏ってない?」

「まるでクロアが悪役のようだな。おいライナー、
 ぶん殴られてぇかコノヤロウっ!」

「な、なんでだよっ!?」

ちなみに、俺の背後にいる不器用なミュールは、全く応援してくれない。

でも、ちゃんと見てくれているから、負けられないよな。

腰を落とし、重心は低く。武器を握り締め、踏みしめた足に力を入れ・・・

ライナー目掛けて、跳んだ。

一瞬で間合いを詰め、槍を連続で繰り出す。

虚をつかれたライナーの頬を槍がかすめ、皮膚が裂け出血する。

「くっ!」

それでも、超人的な反応速度で直撃を避けたライナーは、
左腕に付けた鉄甲で槍を受け止め、鈍い音を立たてて俺の攻撃を逸らす。

俺の体勢が崩れ、一瞬の隙を見逃さずライナーの右手の剣が閃き・・・

俺ののど元で剣の切っ先が止まった。

「・・・参った。俺の負けだ」

「あっぶねー!ギリギリだったぜ。強いな、クロア」

「いや、俺なんてまだまださ」

「二人とも、かっこよかったわよ」

ミシャが謳うと、ライナーの傷がみるみる回復していった。

背中が叩かれ、振り向くとそこにいたのはミュールだった。

「・・・なに負けてるのよ」

「ごめん、ミュール」

「あなたが頼りないんじゃ、私は安心して謳えないじゃない」

「・・・そうだな。俺、もっと強くなるよ。どんなやつが相手でも、
 ミュールを護れるように」

盾になる、という意味だけじゃなく、彼女の心の支えになれるように。

「・・・少しだけ期待してあげるわ」

ミュールは小さく笑んだ。

「クロア君、そろそろプラティナに向かったほうがいいんじゃないかい?」

「俺達もプラティナに戻るから、一緒に行こうぜ」

「ああ」




プラティナに到着した俺を待っていたのは、
騎士団の総帥、レアード・バルセルトだ。

堂々とした立ち振る舞いは、熟練した指導者としての経験と
聡明な知性を物語り、白い前髪から覗く眼光は鋭い。

「シュレリア様やライナーから話は伺っている。君がクロアだな」

後で聞いた話だが、彼はライナーの父親らしい。

「はっ、クロア・バーテルと申します」

「うむ。まずは君が騎士を志してくれたこと、礼を言う。
 君はソル・シエールとメタ・ファルスを繋ぐ
 塔間交流の架け橋になるかもしれんな」

「望外の幸せにございます」

「さて、君が受ける試験だが、その前に紹介しよう。ユリア」

「はい」

少女が近づいてきた。

「レーヴァテイルのユリアだ。騎士のパートナーとなるべく
 彼女も試験を受ける」

金色の短い髪に赤いリボンを付け、まだあどけなさが残る顔立ちは
小さな瞳が輝き、笑みを浮べた紅潮した頬が愛くるしい。

「ユリア・ルシエーラです。よろしくお願いします」

「クロア・バーテルだ。こちらこそよろしく」

「それでは、街の南西にある地下通路へ向かうのだ。君達の試験は、
 プラティナの地下最奥部にあるヒュムネクリスタルを持ってくることだ」

「地下では、ガーディアンが攻撃してきます。機能を制限しているため
 命の危険まではありませんが、気をつけてください」

「わかりました。行こう、ユリア」

「はい!」




門番に通された地下通路は、予想よりも暗く、複雑に入り組んでいた。

「先は長そうだな。注意して行こう」

「・・・・・・」

ユリアは俺の顔を凝視している。

「何か付いてるか?」

「クロアさんって・・・女の子みたいな顔ですね」

「・・・こんな時に変なこと言うなよ」

しかも、そんな満面の笑みで。

「ご、ごめんなさい!」

子どもの頃から言われていたが、そんなに女の子に見えるのだろうか。

幼馴染のルカは、「クロアが女装したらきっと似合うよね」などと
人事だと思って気楽に発言していた。

なにか対策を考えたほうがいいだろうか?

そんなくだらないことで頭を悩ませていると、奥のほうで
白いロボットが空中を徘徊していた。

「あれがガーディアンか。武装してないから、俺達を見つけたら
 警報を鳴らして仲間を呼ぶタイプかもしれない」

「どうしますか?」

「見つからないように移動する。俺が先導するから、
 後ろを常に警戒していてくれ」

「わかりました!」




塔の最上部にあるリンカーネイションと呼ばれる場所は、
巨大なプラグと多数の導力ラインが通る重要な施設だ。

人間の頚動脈と考えていい場所で、私とシュレリアは
アル・トネリコにアクセスして作業に没頭していた。

「ふふ、自分の才能に恐ろしくなるわ。作った本人でも
 解除に手こずるプログラムを構築できるなんてね」

「どうして誇らしげなんですか!あなたのトラップのせいで、
 みんな困ってるんですからね」

「そんなに怒ると741歳のお肌に悪いわよ」

「私は永遠の16歳です!」

時折からかいつつ、手は動かし続けてようやく解除に成功した。

しかしこれはまだ序の口で、より難度の高い作業が
山ほど残っている。

人間への恨みから作りあげたとはいえ、やりすぎたかしらね。

もちろん、口には出さないけど。

「そろそろ休憩しましょうか」

「そうね」 強張った身体をほぐす。

クロアは今、どのあたりかしら。

ここからではプラティナは見えないが、あのユリアとかいう子と
地下を進んでいることだろう。

「ねぇ、ユリアってどんな子なの?」

「すごくいい子ですよ。真面目で気の利く、優しい子です。
 ただ、ちょっと気になることもありますけど・・・」

「・・・どういうこと?」

「実はですね・・・」

シュレリアの言葉を待っていた私が感じたもの。

それは、微かな違和感だった。

「・・・・・・?」

「どうかしましたか?」

気まぐれと言っていいかもしれない。

ただ、ふと塔にアクセスしてみただけなのだ。

そんな私を待ち構えていたのは、想像を絶する事態だった。

「――――――――っ!?」

私の異変に気づいたシュレリアも慌てて塔にアクセスする。

しかし、彼女の表情が驚愕に歪んだ。




「塔が・・・ハッキングされている・・・!?」




信じられない。一体何者の仕業なのか。

だが、今はそれを考える余裕はない。

「ミュール、協力してください!侵入者を追い出します!」

「わかってる!」





「気づかれたか!?」

突如鳴り出した警報に身構える。

「いえ、何か様子が変です!」

現れたガーディアンが小刻みに振動し、黒へと変色していく。

「これは・・・ウイルスっ!?」

「伏せろっ!」

ユリアの身体を押し倒す。

その真上を、ガーディアンが発射した無数の銃弾が通過していった。

武器で打ち返し、ガーディアンを狙撃する。

火花と共に放った銃弾は命中し、敵の装甲を貫通して破壊した。

「大丈夫か?」

「は、はい。ありがとうございます」

身体を起こして、彼女に手を貸した。

「命の危険ありまくりでしたね」

見れば敵の攻撃で壁に大量の穴があいている。

「さっきウイルスとか言ってたけど、何か知ってるのか?」

「以前にも同じようなことがあったそうです。その時は、
 ミュールというレーヴァテイルがばらまいたと聞きました」

「・・・・・・」





「捕まえた!・・・って、あら?」

「・・・しっぽを切って逃げたみたいね。すばしっこいやつ」

シュレリアは悔しそうに唇を噛んだ。

「あと一歩でしたが・・・まぁ、止められただけでも良しとしましょう」

「ウイルス生成プログラムを起動されたわ。塔内部に
 多数のウイルスが出現してる」

「更にいくつかの隔壁の封鎖と導力ラインの遮断・・・
 被害は小さくありませんね」

プログラムの起動を解除する。これで新型の出現は止まり、
念のためプロテクトもかけておけば、誰も触れることができないだろう。

「一体、何者の仕業かしら。心当たりある?」

塔のハッキングなんて、誰にでもできる芸当ではない。

容疑者は絞られるはずだ。

しかし、シュレリアは首を振った。

「・・・いえ、わかりません」

「そう。まぁ、いいわ。後始末は私がするから、貴方は
 レアードに報告に行ったら?」

「そうですね。お願いします」

シュレリアが去り、私は自己修復プログラムを走らせ、
防御プロテクトを多重にかける。

「それにしても、あなたも大変ね。私にハッキングされたり
 得体の知れないヤツに侵入されたり」

思えばこの塔との付き合いも長い。

こんな形になってしまったが、少しは贖罪になるだろう。

「さてと・・・」

暇だし、クロア達の様子を見に行こうかしら。

「別に、一緒にいたいからってわけじゃないけどね」






「行きます!」

ガーディアンを蹴り、その反動で後ろへ飛び退いた。

入れ替わるように、ユリアの放った詩魔法がガーディアンに直撃し消滅する。

「クロアさん、グ~です!」

「ユリアこそ絶妙のタイミングだったよ」

「えへへ」

ユリアは照れながらはにかんだ。

戦闘を重ねて分かったことだが、彼女は詩魔法の威力こそ
課題が残るものの、詠唱速度は群を抜いていた。

ダイブで高威力の詩魔法を紡げば、更なる活躍が望めるだろう。

「そういえばユリアってダイブの経験はあるのか?」

「一回もないですよ。私はしてみたいけど、止められているので」

「そうなのか。誰に?」

何故か遠い目をするユリア。

「・・・だ、誰でしたっけ?」

「おい・・・」

「ご、ごめんなさい!ど忘れしちゃいました」

「そんな大事なこと忘れるなよ」

彼女の金髪と相まって、ユリアがライナーに見えた・・・とは、
言わないでおこう。

「ん?」

通路の影に、何か隠れたような・・・気のせいか?

「あ、やっと着いたみたいですね」

通路を抜けた広い一室に台座があり、その上には紫色に輝く
ヒュムネクリスタルが安置されていた。

「あれを持って帰ればいいんですね」

「・・・一筋縄じゃいかないみたいだぞ」

「え?」

「番人がいるようだ」

魔方陣が出現し、漆黒の光を放つ。

耳をつんざかんばかりの咆哮を上げ現れたのは、
巨大なドラゴンの姿をしたウイルス集合体だった。





「そいつに近づいてはダメよ!」


思わず飛び出した私は、槍を構えたクロアを制する。

「ミュール!?どうしてここに・・・」

「話は後よ。それより、今のままではクロアでもそいつに勝てない。
 いったん退くべきよ」

「しかし・・・」

「早くして!死にたいの!?」

私の剣幕に押され、クロアたちは部屋を抜け出した。




十字路の中央で足を止めた私たちは息を整える。

「どういうことか説明してくれ」

「あいつには一切攻撃が通用しない。何をしてもすり抜けてしまうのよ。
 倒すにはあるヒュムノスが必要なの」

「・・・それは?」


「EXEC_PAJA/.」


かつてライナーたちが、私が放ったウイルスを撃退するために
謳ったヒュムノス。

元々はレーヴァテイルが謳い暴発した詩魔法を鎮める目的で紡がれ、
詩魔法の効能を打ち消す効果を持つ。

その効果を応用すれば、ウイルスに掛けられた詩魔法を除去して
こちらの攻撃でダメージを与えることが可能になるのだ。

「それはどこにあるんですか?」

「内包したヒュムネクリスタルをシュレリアが持っているはずよ。
 二人で行って借りて来なさい」

「待ってくれ、ミュールはどうするんだ?」

「私はあいつをここで足止めする。上に出られると面倒だから」

「・・・ダメだ、危険だ。俺がやる」

・・・心配してくれてるのかしら。悪い気はしないけど、
そうもいかないのよね。

「ばかね、言ったでしょう。今のあいつには通常の攻撃が通用しない。
 それは、あなたが空気を相手に槍を振り回すようなものなのよ」

「それなら、ミュールさんはどうやって・・・」

「あいつは自分の身体を導力へ変換して導力ラインを移動してるの。
 それを防ぐには導力ラインを遮断すればいい。
 あなたたちは、この地下のどこかにある端末を操作してここにある
 導力ラインをダウンさせなさい。そこに逃げられたら手も足も出ないから」

「・・・わかった。ミュール、気をつけてな」

「誰の心配してるのよ。私はβ純血種最強のレーヴァテイルよ」

不適に言うと、クロアは笑んだ。

「行こう」

二人の背中が遠ざかるのを見届けて私は視線を落とした。

「クロア・・・ごめんなさい」

なるべく彼を危険な目に合わせたくなかった。


今ここにいる、得体の知れない誰かは、敵かもしれないから。


「いるんでしょう?出てきなさいよ」


微かな物音が私の耳に届く。

「だてに何百年も生きてないの。あなたのその殺気に気づかないと思う?」

反応はない。

「姿を見せないと、あなたを敵と見なして攻撃するわ」

脅しではなく本気だと教えるため詩魔法の詠唱を始める。

「・・・・・・」

私の前に現れたのは、床に触れそうなまでに伸ばした黒髪を揺らし、
前髪の間から切れ長の瞳を覗かせる少女だった。

人間・・・いえ、レーヴァテイルかしら?

「ミュール、あなたに会いたかったです」

淡々とした抑揚のない声で言う少女。

「それは光栄ね」

詠唱を中断し彼女を注視する。

薄暗い地下内に佇む彼女は白い肌を露出させ、その無機質な
表情から思惑を読み取ることはできない。

「あなた、名前は?」


「アシェリアと言います」


聞いたことのない名前だ。何者だろうか。

「さっき塔にハッキングしたのはあなた?」

「・・・・・・」

沈黙は肯定と受け取るわよ。後で文句言わないでよね。

「私に会いたかったって、それはどうしてかしら」

「・・・私と手を組んでほしいからです」

いささか意外な返答だった。

「あなたの過去を調べました。あなたなら、私に協力してくれると思って」

まったく、ライナーたちといいこの子といい、
勝手に人の過去を詮索しないでほしいわ。

「・・・何故?」

そして、またしても彼女は私の予想を裏切ってくれた。

「私は、人間を滅ぼしたいからです」






  1. 2011/10/15(土) 02:54:51|
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