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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

君の知らない物語

クラスメイトの喧騒に包まれた教室で、
君は腕組みをしながら目を瞑って何かを考えていたよね。

私の視線にも気づかず、ずっと黙り込んでいた君は突然立ち上がったの。

そして子どものように瞳を輝かせながら、君はこう提案したんだ。



「今夜、星を見に行こう」



それは、いつも通りのある日のこと。

太陽が強烈に自己主張する、溶けてしまいそうなお昼休みのこと。

君は澄み切った空よりも爽やかに、私たちに笑いかけたんだ。




「たまにはいいこと言うんだね」

茶化すように言った友達に、私たちは笑いあった。

君はムードメーカーでトラブルメーカー。

私たちを振り回しては、無邪気に遊ぶんだよね。

街灯もない真っ暗な道を、私たちは突き進む。

「なんだか、お化けが出そうだね」

「ば~か。俺たちが会いたいのは彦星と織姫だよ」

「ば、ばかって言うなぁ!」

私の頭に手刀を放った君に、私は大げさに怒ってみせる。

あの時私は、すごくはしゃいでいた。

黙っていると不安に押し潰されそうな気がしていたから。

そんな私を、君はただ、笑ってからかっていたね。


やがて、君曰く「俺しか知らない絶景穴場マル秘スポット」に
到着した私たちは、ずっと我慢していた夜空を見上げてみた。

「わぁ・・・・・・」

幻想的な風景に圧倒された私たちは息を呑む。

満天の星が輝き、世界を照らし、それはまるで、星が降るようで・・・


いつからなのかな。いつの間にか、君を追いかける私がいた。


それは、転校してきたばかりで、なかなか馴染めずにいた私を
初めて君が受け入れてくれたあの時かな。

それとも、学校を病気で休んだ私を君が心配して
見舞いに来てくれたあの日かな。

その答えはもうわからないけれど、あの星空の下で、
私は願い事をしていたんだよ。



この想いが、君に届きますように・・・って。



「あれがデネブ、アルタイル、ベガだ」

君が指差したのは、夏の大三角。

慌てて探すけど、彦星さまが見つからない。

あれ・・・あれ・・・

織姫さまは見つけたのに、これじゃ一人ぼっちだ。


まるで、私みたい。



本当はずっとわかっていたんだよ。

君の隣には、あの子がいることを。

知ってるんだよ、あの子にしか見せない表情があることを。

それなら・・・見つかったって、届くわけないじゃないか。


織姫は、私ではないのだから。


「・・・ぅ・・・っ」 

目じりに涙が溜まる。

ばか、泣くな。

目にごみが入ったふりをして、私は目元を何度も拭った。

「私、あっちへ行ってみるね」

悟られないように、私はみんなから離れていった。




静寂の暗闇の中、私は一人佇んでいた。

そこは世界から切り離されたような場所で、
私にはお似合いなのかもしれない。

「痛い・・・」

手で押さえた胸が締め付けられる。苦しい。

君への想いがとめどなく溢れ、涙となって頬を伝う。


ああ、そうか。


この気持ちを、好き・・・って言うんだね。


「こんな所で何やってんの?」

背後からかけられた声に私は身体を震わせる。

「・・・別に?」

涙が止まるまで目を合わせないようにしよう。

今の私の顔は、涙でぐしゃぐしゃだと思うから。

「そっちこそどうしたのよ」

「いや、何かおまえの様子が変だから気になってさ」

「・・・・・・」

やっぱり優しいんだね。

それが、私だけに向けられるものなら良かったのに。

ねぇ、私はどうしたい?

私の心は、何を求めているの?

自問自答の末に、私は答えを出した。




ずっと、君の隣にいたい―――




二人きりの今なら言えるだろう。私はゆっくり言葉を紡ぐ。

「ありがと。でも、大丈夫だよ。それより、あのね・・・?」

しかし、彼は何故か照れくさそうに笑い、頬を掻いた。


「俺さ、やっぱりあいつのことが好きだ」


「・・・・・・え?」


「あいつに、告白しようと思う」


「・・・・・・」


残酷な、真実。


ああ、本当にばかなんだ、私って・・・・・・






私は部屋の窓を開けて、夜空を見上げる。

もう二度と戻れない、あの夏の日と似た星空。

星を見ているとね、君を思い出すんだ。

笑った顔も、怒った顔も、大好きだった。

おかしいよね、心のどこかで君の想いはわかっていたのに。


それは、君の知らない、私だけの秘密―――


冷たい風が室内に吹き込む。

「そろそろ、今年の夏も終わりだね」

季節は流れて、もう私と君の道が交わることはないだろう。

それでも、夏が来るたびに遠い思い出の君が指差すんだ。



あの夏の大三角を、子どもみたいな、無邪気な声で。

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  1. 2011/10/30(日) 22:03:39|
  2. 二次創作
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