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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第5話

地下の一室で機械を操作して、接続されていた導力プラグを引き抜く。

ヒュムノス語で警告のアナウンスがされたがそれは無視しておいた。

「よし、シュレリア様のいる大聖堂に向かおう」

「あの、足音が聞こえませんか?」

耳をすますと、床を駆け抜ける複数の足音が近づいてきていた。

「やぁ、ここにいたんだね」

飛び込んできたのはライナーとアヤタネだった。二人とも抜刀している。

「どうしてここに?」

「塔に夥しい数のウイルスが発生したんだ。俺たち騎士団は
 ウイルスの撃退が最優先だから、試験は中止になったんだよ」

中止か・・・やむをえない判断だろう。

「僕たちはここを抜けて塔へ向かう。君たちは戻って
 シュレリア様のご指示を仰いでくれ」

「待ってくれ、この先にも巨大なウイルスと、ミュールがいるんだ」

事情を説明すると、二人は顔をしかめた。

「PAJAって昔ミシャを助けるためにオリカが謳ったやつだよな?」

「そうだね。しかし状況は好ましくないね。まさかこんな所にまで
 ウイルスが出てくるなんて」

アヤタネは何かを思案した後、口を開いた。

「塔ヘは僕が一人で向かうよ。ライナーはクロアたちに付いていてくれないか」

「しかし・・・」

俺の心配をよそに、ライナーは胸を叩く。

「わかった、任せてくれ」

アヤタネは力強く頷き、二振りの刀を握り締めた。

「みんな、母さんをよろしく」

そう言うと、アヤタネは風のように駆け抜けていった。

「アヤタネ一人で大丈夫なのか?」

夥しい数のウイルスがいるという言葉が、俺の頭をよぎる。

しかし、そんな俺の不安をライナーは一笑に付した。

「大丈夫さ。なんたってアヤタネは俺より強いからな」

「そうなのか?」

思い返せば女性のような外見とは裏腹に、その立ち振る舞いには
貫禄が備わっていた。

その強さの根本にあるものは、きっと、ミュールを守りたいという
確かな想いから来るものなのだろう。

「それに、既に多くの騎士たちが塔に向かっている。すぐ合流するさ」

「では、私たちは大聖堂へ行きましょう」

しかし、俺は首を振った。

「すまない、二人だけでシュレリア様に会ってきてくれないか」

二人は目を丸くし、当然の疑問を口に出した。

「どうしてですか?」

「俺は、やはりミュールの所に戻ろうと思う」

「でも、私たちの攻撃は通用しないんですよ?」

「倒せなくても、ミュールの盾になれればそれでいい。
 俺は、ミュールを護ると誓ったから」



もう、誰にも彼女が傷つけられることのないように。



そんな俺の気持ちを察してくれたのか、二人は頷いてくれた。

「クロア、気をつけろよ」

「ああ、すまない」

二人の背中が離れていくのを見届け、俺もミュールの下へ向かった。






「選択してください。私に協力するか否か」

「もし断ったらどうなるのかしら?」

「私の邪魔をしなければ放っておきます。あなたはレーヴァテイルだから。
 ただ私に敵対するようなら、その時は全力であなたの命を奪います」

「・・・まったく、物騒なやつね。私は平和主義者なのよ」

レーヴァテイルだから―――か。つまり、あなたは同族のようね。

しかし、解せない。

どうしてこいつは、私にこんな話をするのかしら。

人間を滅ぼしたいのなら、わざわざ私の前に現れないで
策と罠を張り巡らして急襲すればいいはずだ。

私を誘ったことだって、私が敵に回れば名前も顔も
知られてしまうというのに、そんな危険を冒す必要がどこにあるの?

それとも、そんなリスクを犯してまで私は仲間に・・・いえ、
利用する価値があるということかしら。


結論は出せない。


しかし、こいつはすごく重要なことを隠している―――


それは確かだ。


遠くで誰かの足音が聞こえる。こちらに近づいてきているようだ。

もしかして、クロア?

「・・・当初の目的は果たしたのでこれで失礼します。またお会いしましょう」

アシェリアはその漆黒の髪を翻し、静かに立ち去ってゆく。

しかし、やがて立ち止まった彼女は少しだけ振り向いた。

「そうそう、あのウイルスは私がつれて帰ります。それと、あなたが止めたウイルス生成プログラムは、私が作りあげたダミーです。本物のシステムは既に私が掌握しました」

この女、そんなことまでできるのか。侮れないわね。

「・・・それと、あなたたちのすぐ傍に、私の妹がいます」

「妹・・・?」

「頑固で融通の利かない一面もありますが、優しい子なので
 仲良くしてあげてください」

「妹って、誰のことかしら?」

しかしアシェリアは何も答えない。

「それではごきげんよう」

私に背中を向けてゆっくりと闇に溶け込んでいった。

「・・・・・・」

やがて、私の耳に巨大な爆発音が届く。

どうやら、壁を破壊して逃げたようだ。

「ミュール!」

駆け寄ってきたのは、予想通りの人物だった。

「クロア・・・」

私の姿を見つけて安堵したのか、彼は強張った表情を崩す。

「無事でよかった」

そう言って彼は優しく微笑んだ。

「でも、ウイルスには逃げられたわ」

「そうか・・・まぁ、しかたないさ」

「・・・知ってる?今回は乗っ取られてしまったけど
 あのウイルスは元々人間を滅ぼすために私が作ったの」

「・・・・・・」

「あなたがコスモスフィアで見てきたのは、表面的なことだけでしょう?
 だから教えてあげる。私は明確な殺意を持って数百年もの間、
 塔内にずっとばらまき続けてきたのよ」

クロアは何も言わず、ただ、私の話に耳を傾ける。

私、何でこんなことを話してるのかしら。

同情してもらうため?だとしたら、とんだ笑い種だわ。

「はっきり言うわ。この世界には、私に恨みを持つ人間が大勢いる。
 それが爆発して、私に危害を加えるどころか、あなたも巻き込まれる
 危険性がある」

それでも。

「それでも、あなたは私と共にいるというの?」

「・・・・・・」

今なら、あなたは元の生活に戻れる。

あなたのためなら、私がメタ・ファルスまで送ってもいい。

アシェリアの出現は、これから先に起こる戦乱を
私に予想させるのに十分だった。

それでもまだ、あなたは私と・・・



答えて、クロア。


彼は口の端を上げて、私の頭の上に手を置いた


「俺は絶対にミュールの傍から離れないし、放さない」

「・・・どうして?」

「先に言っとくけど、俺はミュールへの同情心で君の傍にいるわけじゃない。
 君がやったことを、しかたないって無責任な言葉で片付けるつもりもない。
 でも、俺は君の心の中で、君の本当の気持ちを知ったんだ。
 ミュールはいつも強がってるけど、本当はすごく弱くて
 繊細で優しい心の持ち主なんだって」

「・・・よくそんなこと恥ずかしげもなく言えるわね」

「君から離れてくれって言われてもそれはもう無理だ。
 俺は君という世界で一番大切な人を見つけたから」」

「私は人じゃなくてレーヴァテイルよ」

「そうだな、俺は人間でミュールはレーヴァテイル。これはゆるぎない事実だ。
 でも、俺は君がレーヴァテイルで本当に良かったと思ってる」

「え・・・?」

間抜けな声を出してしまった。

彼の言葉は、それほど意外なもので・・・

「最終階層までダイブできるほど、君が俺を受け入れてくれたこと、
 本当に嬉しかったんだ。今は君の心の中を、俺がかなり
 占めているんじゃないかと自惚れてもいる」

「・・・・・・」

「何の打算も邪な気持ちもない。ただ君のことが好きで、
 ずっと君と歩いていきたいと、心からそう思えるから、
 君と一緒にいたいんだ。

 それじゃ・・・ダメか?」


「・・・・・・ふふ」

まったく、本当に変な人間なんだから。

笑っちゃうくらいおかしいのに、全然嫌な感じはしない。

「ねぇ、あなたって、物好きだって言われない?」

「時々な」

「あなたみたいな変人は、今まで見たこともないわ。
 私の知的好奇心を大いに触発される。おもしろいやつね」

「それはどうも」

「だから、私の傍にいることを許可してあげるわ」

素直じゃない私の態度にクロアは人懐っこく笑う。


私は・・・あなたのそういう所に惹かれたのかもしれない。

誰よりも私を見てくれて、私を受け止めてくれる。

そんな人は今まで一人もいなかったから、正直、
どう対応すればいいのかわからない。

でも、あなたが傍にいてくれれば、それだけでいいと思う自分がいる。

その気持ちは、きっと、悪いことじゃないよね?

「そういえば、ユリアは?」

「ああ、それが・・・」





「そう、中止になっちゃったの。残念ね」

「しかたないさ。さ、大聖堂へ行ってライナーたちと合流しよう」

「ええ」

クロア、ありがとう―――

私の前を歩く彼の背中にそっと手を触れた。




大聖堂の入り口でライナーたちと再会し、俺たちはシュレリア様に報告をした。

「・・・そうですか。ご苦労様でした」

傍にはライナーやユリア、アヤタネがいて、既に塔内のウイルスは
あらかた片付いたそうだ。

「ミュール、突然居なくならないでくださいよ。
 心配するじゃないですか」

「私の勝手でしょ」

ミュールは端のほうで柱に背を預けていた。

「塔に厳重な防御プログラムを組んで起動しました。
 もはや進入することは不可能でしょう。先の侵入者ですが、
 今メイメイに調べさせています。いずれ判明するでしょう」

「あの、それでシュレリア様、私たちの試験はどうなるのでしょうか?」

「それについては私から説明しよう」

ユリアの問いに、レアード総帥が答える。

「入団試験は一連の問題が解決するまで延期になった。だがその間
 二人とも手持ち無沙汰だろう。そこで、二人を騎士見習いとして
 扱うことにした」

「見習い・・・ですか?」

「ウイルスに汚染されたガーディアンを倒したのだろう。
 既に騎士になるための実力を備えておると言える。
 騎士団の寮に二人の部屋を用意したから
 今日からそこに泊まりなさい」

「はい、ありがとうございます」
 




「えと・・・あった、ここだ」

女子寮に向かうユリアと別れ、広い通路で向かい合った扉の一つを開ける。

中は予想より広く、ベッドや冷蔵庫などが置かれていた。

息をつき、ソファに身体を倒す。

白い天井が目に入り、蛍光灯が眩しい。

「ん?」

扉がノックされ、身体を起こしてドアを開けると・・・

「ミュール?」

「・・・・・・」

黒い淑羽織を来て、顔を真っ赤に染めて彼女が入ってくる。

「どうした?」



「わ、私もここに住むから」


「え・・・!?」

ミュールはベッドの端に腰掛けて、突っ立っている俺を見る。。


「こ、これからよろしく・・・」

ミュールはそう呟いた。
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  1. 2011/11/10(木) 01:01:04|
  2. アルトネリコSS(修正中)
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