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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第7話

「イム・フェーナはテル族という民族が住み、
 独自の文化が根付いているんですよ」

シュレリア様の説明を受け、俺は周囲を見回す。

民族衣装を着た通行人の頭部には鋭角な角、お尻には尻尾が生えていた。

「こっちにもテル族がいるんだな」

「当然よ。昔、ソル・シエールからメタ・ファルスに渡った
 テル族の子孫が、アマリエたちなんだから」

「なるほど」

大通りを抜け、大本願へと入ったその先に、黒い衣装を纏い
フードで顔を隠した男性がいた。

その隣にはジャックと、グラマラスな金髪の女性。

「シュレリアと騎士二名、及びその仲間一同、ただいま参りました」

「遠路はるばるご苦労。待っていたぞ」

フードの男性と目が合う。物事を見透かす、静かな水面のような瞳だ。

「君が、クロア・バーテルだな」

「はい」 簡単な自己紹介をする。

「私はフラウトだ。テル族の長を務めている」

「私はクレアよ。よろしくね」

優しげな眼差しに、朗らかな微笑み。

そこにいるだけで、魅力を醸し出す、大人の女性だ。

「それで、用って何かしら?」

クレアさんが首をかしげる。

「突然呼ばれて、驚いたわ」

「・・・・・・」

「オリカ・・・」

ミシャがオリカの肩を叩く。

「・・・うん。お姉ちゃんに話があるの」

「何かしら?」

オリカは深呼吸して、言った。

「私たち、スクワート村を再興させようと思ってるの」

「・・・え?」

「お姉ちゃんには、生まれ変わった村の村長になってほしいの」

「・・・・・・」

雰囲気が、一変するのがわかる。張り詰めた空気が、場を支配する。

「・・・突然、そんなことを言われても困るわ」

クレアさんは笑みを見せるが、それには戸惑いが滲んでいる。

ふと、ミュールの様子が目にいく。

小さな身体を震わせ、床に視線を落としていた。

「実はずっと前から考えていたの。もちろん私一人じゃできないけど、
 シュレリア様やフラウトさん、天覇の亜耶乃社長も協力を約束してくれた」

「まぁ、元凶はファルスとボルドだが、俺たちにも責任あるからな・・・」

ジャックが頭をかく。その言葉には、躊躇いが見えた。

俺の知らない、過去の話のようだ。

「特にオババ様は、深く心を痛めておられた。
 人間との共存を望まれていたからな」

「私たちも異論ありません。それがソル・シエールに住む
 全ての民の友好に繋がるなら、協力を惜しみません」

「ありがとうございます、シュレリア様」

オリカは嬉しそうに頭を下げた。

「私は・・・」

クレアさんは悲しげにうつむき目を伏せる。

「ごめんなさい。私にはできないわ」

「お姉ちゃん・・・」

二人の瞳が揺れ、クレアさんは居心地が悪そうに、
自らの身体を片腕で抱きしめる。

「今でも時々思い出すの。何もできなかった・・・無力な自分を」

唇をかみ締め、拳を握る。

「・・・ごめんなさい」

そう言うと、クレアさんは走り去ってしまった。

「お姉ちゃん!」

「オリカ、追いかけるんだ!」

ライナーの言葉にオリカは頷き、外へと走っていった。

「どうかしたのか?」

ミュールは華奢な身体を震わせ、唇をかんでいた。

「・・・何でもないわ」

とてもそうは見えない。俺と目を合わせてくれないことからも。

「お前、もしかして・・・」

ジャックが怪訝な表情を浮べる。

「風に当たってくるわ」

そう言い残し、ミュールは神殿を抜け出ていった。

「まさか、気にしてるのか?」

「どう・・・かしら。ミュールは何を考えてるかわからない所があるから」

顔を見合わせるジャックとミシャ。

「二人とも、何か知ってるのか?」

「それは、私が話そう」



かいつまんで話してもらった内容は、胸糞が悪いものだった。

邪悪な欲望のためにミシャを拉致した男たちと、それを追った
テル族との諍いで、村が戦場になってしまったらしい。

俺だけが知らなかった過去に、歯軋りする。

「クロア、ミュールを追いかけてあげてください。誰かが傍にいてくれたら、
 心は安らぐものです。あなたなら邪険にされることもないでしょう」

「わかりました」

ミュールの下へと向かった。



「やっと見つけた」

お姉ちゃんは街外れの崖の上にいた。

お姉ちゃんが見据える先は、私たちの生まれ故郷があった方角だ。

「ねぇ、あそこにいた頃のこと、覚えてる?」

「覚えてるよ。いいことも、嫌なことも」

お父さんの大きな背中とか、お母さんの優しい笑顔は
今もこの目に焼きついている。

お姉ちゃんと一緒に過ごした、失うことで初めて気づいた、
かけがえのないあの愛おしい日々。

その思い出は、私の胸にしまっている。

「変わったわね、オリカ」

風が雑草を揺らし、青空に浮かぶ雲が気ままに流れてゆく。

「あなたは強くなったわ。私は今でも、時々あの日を思い出すのに」

「・・・・・・」

「どうして村を復興させようと思ったの?」

「スクワート村はあたしにとって本当に大切な場所なの。
 廃墟のままじゃ悲しいし、亡くなった人たちも浮かばれないと思うから」

私たちはまだ、村のみんなの弔いもできていないのだ。

「みんなの手を煩わせるのよ。それはちょっと、我侭じゃないかしら」

「もちろんわかってる。最初は一人で少しずつ始めるつもりだったから。
 でも、みんな喜んで協力するって言ってくれて。本当に嬉しくて、
 私はみんなの言葉に甘えることにしたの」

心の中でもう一度感謝の気持ちを述べる。みんな、ありがとう。

「お願い、お姉ちゃん。力を貸して」

お姉ちゃんがいてくれれば、私はどんな困難にも
立ち向かってゆける気がするから。

「・・・・・・」

お姉ちゃんはまだ迷ってるようだった。落ち着き無く視線をさ迷わせている。

私はお姉ちゃんの次の言葉をじっと待つ。

空を飛ぶ小鳥の優しいメロディーが、お姉ちゃんの耳にも
届いているだろうか。

やがて私たちは向かい合う。相手の目を見つめて、揺るぐことなく。

「もう一つだけ聞かせて。復興は誰のためにやるの?」

それは私であり、みんなのためであり――――――


「お姉ちゃんのため」


自分にできることを、ずっと考えていた。

私が少しでも強くなれたのは、みんなのおかげ。

だからこれは、私なりの恩返しなんだ。

「お姉ちゃんは弱くないよ。ずっと見てきた私はよく知ってるもの」

想いを言葉に込めて、一つ一つ、愛おしむように紡いでゆく。

「昔の私は自分のことで精一杯だった。ううん、自分と向き合うことすら
 していなかった。そんな私がここまで来れたのは、私の背中を押して
 手を引っ張ってくれる人たちがいたから。みんなと会って、
 私は始めて自分を好きになれたの」

嘘偽りのない気持ち。胸を張って言えることが何よりも嬉しい。

「私はもう、大丈夫」

だから――――――


「ありがとう、お姉ちゃん」


優しくて、でも力強く誇らしげに囁いた。

「・・・うん」

お姉ちゃんは本当に柔らかく微笑んだ。

やっと伝えられた大切なこと。お姉ちゃんが思ってる以上に、
私はお姉ちゃんが好きなんだってこと、いつか気づいてくれたらいいな。

「オリカの気持ち、私に届いたわ。あなたを見ていると眩しいくらい」

お姉ちゃんは目を細め、しっかりと告げた。

「私もやるわ。みんなと力を合わせて、一生懸命がんばりましょう」

「うん!」

自分が向き合えば、相手も向き合ってくれる。

離れた心も、明日になれば交わることができる。

それは、あなたが教えてくれたことなんだよ。

そうでしょ、ライナー。




「ミュール・・・」

イムフェーナを離れた、シルヴァプレートの丘に彼女はいた。

「私のこと、追いかけてきたの?」

無言で頷く。

「別に何も言わなくていいわ。ただ、傍にいて」

「わかった」

せめてと彼女の小さな手を握り締める。

ミュールも握り返し、彼女はずっと空を見上げていた。
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  1. 2012/03/23(金) 00:57:44|
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