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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第9話

スクワート村の元住民が見つかったという報告が
ミシャに届いたのは、朝方の頃だった。

「50歳くらいの初老の男性で、今はご家族と一緒に住んでいるそうよ。
 今は天覇の系列会社に勤めているんだって」

「家族がいるってことは・・・」

「ええ、スクワートへの移住は難しいでしょうね」



ミシャの予想どおり、彼の家を訪れたものの男性は難色を示していた。

「う~ん、そう言われても困るよ。私たちには今の生活があるんだから」

まぁ、当然よね。利便性という点ではあきらかにほたる横丁が勝っているし、
スクワート村の住居はまだ完成してすらいないのだ。

「ごもっともだと思います。こちらとしてもぶしつけなお誘いでしたから。
 それでは、スクワートに戻る気は起きませんか?」

「悪いね」 男性の意思は固いようだ。

さて、ミシャはここからどうやって説得するのかしら。お手並み拝見ね。

「それでは、これで失礼致します。突然押しかけてすみませんでした」

危うくずっこけるところだった。

「ちょっと。そんなあっさり引き下がっていいの?」

「だって無理強いはできないもの」

「でもせっかくここまで来たのに・・・」

「この人には命がけで築き上げた守るべきものがある。それを壊してしまうことになるかもしれないなら、少なくとも今日初めて会ったばかりの私たちが踏み込んでいい話ではないわ。干渉していいのは、同じ村で同じ時間を共有したオリカとクレアさんだけよ」

「クレア・・・?」

その名前に反応した男性が懐かしそうに目を細める。

「そうか、彼女は無事だったのか。幼いのにしっかりした子でね、
 私には娘がいなかったから自分の娘のように可愛がっていたんだ。
 そうそう、オリカちゃんは彼女にいつもくっ付いていたな。
 笑みを絶やさない、人懐っこい子だった」

「・・・・・・」


「どうして、あんなことになってしまったんだろうな・・・」


彼の胸に去来するものは何か。


―――私が壊してしまった、平和な日常だろうか。


ボルドがミシャを連れ去ったのはきっかけの一つにすぎない。

結局は裏切ったが、ボルドの背後にいたファルスは元はプラティナの人間だった。

ファルスが野心を抱いたのは過去の文献で私の存在を知ったからに他ならない。


私がいたからスクワート村は滅びてしまった。


この男性に真実を告げれば、彼は私を恨むだろう。

それが、何故か怖い。

どうしてだろう。悪いのは人間じゃないか。
私は自らの身と仲間を守るために行動を起こしたのだ。

「・・・ミュール?」

それなのに、声をかけてきたクロアの顔を見ることができない。

怖い。どうして体が震えるの。

ここに、いたくない。

私は弾かれたように外へ飛び出そうとして・・・


誰かが、私の腕を掴んだ。



ミシャだった。



「・・・・・・」

ミシャは無言で首を振り、男性に向き直る。

「そのクレアさんから、伝言を預かっています」

少しだけ間をためて口を開く。


「あなたの選択がどちらになっても、私はあなたの意志を尊重します」


ミシャの体が震えている。私はその理由に思い当たった。


ミシャもまた、結果的に村を崩壊させる歯車の一つになってしまったのだ。


そこにミシャの意思はなくても、彼女になすすべがなかったとしても。


・・・オリカだけじゃなかった。ミシャも、トラウマを抱えていたのかもしれない。


「でも、どうか村で過ごした日々を忘れないでください。
 
 私たちは、どんなに離れてても村の仲間です」


ミシャの声が涙声になってきた。

ミシャの性格だ。本当は彼女も男性に謝りたいのだろう。

しかし、それをすると話がこじれて、移住どころではなくなってしまう。

もしかしたら、それは逃げなのかもしれない。

でも、私たちにそんな彼女を責める資格はない。


「今日まで一生懸命生きてきてくれて、ありがとう―――」


ミシャは、そう囁いた。

クレアの伝言というだけでなく、今のはミシャ自身の想い。
そう聞こえたのはきっと間違いじゃない。

「・・・・・・」

しばらく誰も言葉を発さなかった。やがて沈黙を破ったのはこの男性だ。

「正直、心が揺れている。だが、私の一存だけで決めるわけにもいかないんだよ。
 ただ、近々向こうに顔を出してみるよ。それでいいかな?」

「・・・はい!」

微笑むミシャの頬から、一筋の涙が流れていた。



クロアたちに無理を言って別れ、私とミシャは高台へやってきた。

「泣いちゃった。ばかだよね。あの人の方が何倍も辛いのに」

「ミシャ、あなたやっぱり・・・」

「どうしようもなかったと割り切ってもいいんだけど、何か違う気がするの。
 だからって私にできることなんて限られてるから、前を向いている
 オリカやクレアさんの手助けができればいい、そう思ってるわ」

「・・・・・・」

「ミュールは、変わったよね」

「・・・え?」

「さっき、逃げだそうとしたでしょ。あれは、胸が痛んだからよね?
 前の自分からは、想像もつかないんじゃない?」

「・・・よくわからないわ」

胸の内でくすぶる人間への憎悪。これはまだ霧散したわけじゃない。

人間を見ていると、怒りがこみ上げてくることがある。

それはクロアさえ例外ではない。

だが、クロアと共にいると形容しがたい感情を覚えることも確かだ。

まるで私の知らない自分に変えられていくような、悦びと恐怖。

いつのまにか心に息づいてしまっている。

まったく、思いどうりにならない自分の気持ちがもどかしい。

だからミシャへの返答は、わからない、で正解なのだ。

「きっとクロアの影響なのよね。ミュールを変えた彼のことが、私も気になるわ」

「よく言うわね。あなたはオボンヌ一筋でしょうに」

「そうだけど、別のベクトルで興味があるのよ。向こうにはたくさんの友人や
 思い出があったはずなのに、全て捨ててミュールを選んだのよね。
 それって誰でもできることじゃないと思うけど」

「クロアは・・・変人なのよ」

だが、今でも心によぎる。


クロアは、私についてきて本当に良かったのだろうか。


向こうにいたほうが、幸せだったのではないか。


そう思えてならない。

「ミュール、嘘はついたらダメよ」

「私は嘘なんかついたことないわよ」



「誰かにじゃなくて、自分の心によ」



「・・・・・・」


何も言い返すことができなかった。




一方その頃。

スクワート村からプラティナに戻った私は、メンテナンスロボットの
メイメイに呼ばれて天文台へ向かっていました。

先日のハッキングの件で、何か手がかりを掴んだようです。

しかし無事にたどり着けるはずもなく・・・

「あう・・・迷子のようです」

どうしてアル・トネリコの内部はこんなに複雑なのですか。

オリカさんのご提案どうり、管理者権限を使用して塔内に
直通のエレベーターを設置するか、本気で悩んでしまいます。

でも、ミュールが言うには

「そんなものがあったら、ゲームやこの二次創作が成り立たなくなるわ」と

一蹴されました。

ゲームや二次創作って何のことでしょうか?

ようやく天文台に到着しました。つ、疲れました・・・

巨大な望遠鏡の下でメイメイが寝息を立てています。

わ、鼻ちょうちんです!初めて見ました。


「あっ・・・ライナーさん、そこはダメですぅ・・・くぅ」


聞かなかったことにしましょう。

彼女の周囲に、表紙にかわいい女の子が描かれた薄い本が点在しています。

その本の一つを手にとってページをめくってみます。

「うわわっ!」 思わず本を床に落としてしまいました。

な、何でメイメイがこんな内容の本を持ってるんですか!

そういえば以前ミュールやラードルフさんと旅行に行って、
聖地がどうだの戦利品がどうだの力説していましたが、
この本と関係あるのでしょうか。

よくわかりませんが、聖地恐るべしです。

「メイメイ、起きてください」

「むにゃ・・・あ、シュレリア様。遅いので待ちくたびれて 
 寝てしまいました。また迷子ですか?」

「迷子じゃありません。塔内の見回りをしていたんです」

「そのわりには、同じところをグルグルと回っていましたよね」

「見てたんなら助けてくれればいいじゃない!」

まったくもう!気がきかないんだから。

「それで、何かわかったの?」

「残存した証拠を調べて容疑者を絞り出した結果、
 β純血種レーヴァテイル・美枷(みかせ)が浮かび上がったんです」

予想だにしない名前が出てきた。

「美枷?ありえないわ。今の彼女にハッキングなんてできるわけないわ」

「はい、誰かが彼女に成りすましたんだと思います」

「・・・・・・」

「あと三点ほど報告があります。侵入者は、塔の内部構造のデータも
 盗んでいったようです」

「内部構造?何でまた・・・」

「わかりません。善行に使うとは到底思えませんけど」

「残りの二つは?」

そこでメイメイの声がトーンダウンし、



「実は、SHサーバーに侵入しようとした形跡が見られました」


「―――――――っ!?」


息が止まるかと思った。


目の前の景色が驚愕で歪む。


「嘘でしょ・・・SHサーバーに侵入されたら・・・」


「はい、SHサーバーが無くなれば、全レーヴァテイルが死滅してしまいます」


絶句する。


「SHサーバーのセキュリティは塔のシステムの中でも一・二を争う
 堅固なプロテクトですが、ちゃんと作動してくれてよかったです。
 私が知る限り、SHサーバーにハッキングを試みた存在は
 今まで誰もいませんでしたから」

「当たり前よ!取り返しのつかないことになるところだったわ!」

甘かった。事態の深刻さは私の予想を遥かに超えていた。

「最後の一点は、ウイルスプログラムを起動させた侵入者と、
 SHサーバーに潜り込もうとした存在は別々だということです」

更なる追い討ちだ。

「それじゃ・・・」

「はい、先日シュレリア様たちが追い出したハッカーをαとして、
 
 もう一人・・・得体の知れないUNKNOWNがいるということです」


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  1. 2012/06/25(月) 01:10:40|
  2. アルトネリコSS(修正中)
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