FC2ブログ

君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

一次創作 最強と最弱の彼女 第2話

最底辺の魔法使い、志宝院優雨を100年に一人の凡人とするなら。

星出水月は、100年に一人の大魔法使いとされている。

まだ年端もいかない少女でありながら、講師たちを遥かに上回る
絶大な魔力を誇り、彼女と対等以上に渡り合える者は
世界でも数えるほどしかいないとされる程だ。

水月は、優雨をかばうように前に出ると、風香を睨みつけた。

「校内での私的な魔法行使は・・・禁止されているはず。
 優雨を傷つけるなら、見過ごせない」

「ただちょっとじゃれあってただけですよ、先輩」

「・・・・・・」

悪びれずにのたまう風香に、水月はますます眼光を尖らせる。

一触即発の気配。優雨が二人を止めに入ろうとすると・・・

「もめごと?もめごと!?マリアも混ぜて~!」

「えっ?」

いつの間にか、少女が優雨の背中に張り付いていた。

「優雨ちゃんの頬って桜餅みたいだよね。いただきま~す」

かぷっ。

「ふにゃんっ!」

少女に頬を甘噛みされ、優雨はくすぐったそうに身をくねらせる。

一方、水月は呆れたようにため息をついた。

「何をやってるんですか・・・校長先生」

「えへへっ」

少女が軽やかに飛び降りる。

「っとと、うぎゅっ!」

かと思えば、バランスを崩し転倒、階段を転げ落ちてゆく!

「だ、大丈夫ですか!?」

優雨と水月が駆け寄るが、少女は何事もなかったようにすっくと立ち上がった。

「あははっ、失敗失敗♪」

彼女の名は、マリア・インフェリアーレ。

見た目こそ齢十も行かない幼女だが、侮るなかれ、
彼女こそ押しも押されもしない、魔法学校の頂点に君臨する魔法使いなのだ。

性格は無邪気そのものだが、唯一水月に土をつけた人物で、
その絶対的な強さは生涯無敗を継続中と噂されている。

「そこにいるのは風香ちゃん!ね、ね、マリアも輪に入れてくれない?」

「い、いえ、私はこれで・・・」

風香もマリアは苦手らしく、そそくさとその場を後にする。

「あっれ~?」

首をかしげるマリアに、二人は苦笑するしかなかった。



訪れ始めた夜。

水月が壊した校舎の窓を魔法で直し、二人は通学路を並んで帰宅する。

「どうして・・・あの子とケンカしてたの?」

「私がいけないの。怒らせるようなこと言っちゃったから」

「・・・本当に?」

「そうだよ。どうして?」

「あんなの・・・人に向けて放つような魔法じゃない。
 私が止めなかったら、どうなるかわからなかった」

「そうかもしれないけど、でも、やっぱり私が悪いよ」

知らないうちに、風香を傷つけてしまったのかもしれない。

そんな思いに至り、優雨の胸がチクリと痛んだ。

「・・・・・・」

溜め込んだ息を水月が吐き出す。

「優雨は自分が悪くないのに、すぐ人をかばう。そうゆうのは良くない」

優雨は時々、危なっかしい所がある。

だからこそ、お守りとしてこの子を傍においていたのに。

「・・・真っ先に逃げるなんて、使い魔失格」

水月が肩に乗ったミューイの額を指で弾く。

「いやいや、マスター、あれは無理ですって!
 私がどうにかできるレベルを超えてますよ」

「あなたの今のマスターは私じゃない。それに、もっと早く私を呼べば
 優雨を危険な目に遭わせることもなかった。反省するべき」

鋭い眼光で威圧すると、ミューイは大きく肩を落とした。

「うぅ・・・はぁい」

ミューイがあまりにしょぼんとするものだから、

「ミューイちゃん、私は気にしてないよ。水月ちゃんも、もう許してあげて」

「・・・優雨は甘い」

もっとも、そんな水月も優雨には甘いのだが。

「守ってくれてありがとう、水月ちゃん」

「・・・・・・」

満面の笑みで言われると弱い。

水月はあさっての方向を向く。

彼女なりの照れ隠しなのだ。

最強の少女も、最弱の少女には敵わない。

そんな不思議な絵が、そこにはあった。
スポンサーサイト



  1. 2013/03/09(土) 00:05:07|
  2. 最強と最弱の彼女
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3