FC2ブログ

君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 桐乃SS 「きっとここから」  第4話

「お、お前何でここに・・・いや、いつからいた?」

「ククク・・・「だましやがったな、あやせ!」からよ」

「最初からじゃねーか!」 いちいち俺の声色を真似しやがって。

「そんなことより、これはどういうことかしら?」

黒猫は鋭い眼光で俺を睨みつける。

「どうしてあなたが、このスーパービッチと一緒にいるの?」

すげーこと言うな。ブチ殺されますよ。

「デートの邪魔をしないで頂けます?邪気眼電波女さん」

バカ、それは地雷だ。黒猫が鬼のような形相になってるじゃないか。

「じゃ、邪気眼・・・ででで電波女ですって・・・?
 ククク・・・闇に呑まれたいようね」

「わたし・・・怒ると怖いそうですよ?」

一触即発どころか殺し合いを始めそうな雰囲気である。

「待て待て!二人とも落ち着けって!」

「・・・・・・ふん」

「・・・・・・」

「お前らいつの間に知り合ったの?」

「「そんなことはどうでもいいでしょう?」」

「・・・はい」

まぁ、間違いなく桐乃が関わっているんだろうが、
対極に位置するこの二人が顔見知りとはな。

去年の夏コミですれ違ったとはいえ、黒猫はともかく、
あやせは桐乃の裏の顔を知ってそれどころじゃなかったはずだし。

「さぁ、京介。あなたの妹に知られたくなかったら、私を連れて行きなさい」

「どっちも勘弁してくれ!」 死亡フラグの気配がプンプンなんだよ!

「断るわ」 一瞬の躊躇も無く言いやがった。

「あなた、自分がお邪魔虫だということがわからないんですか?」

「何とでものたまうがいいわ。今の私は復讐の天使・・・
 空気を読む?気を利かせる?―――八ッ、クソ喰らえよ」

完全にグレている。

思い当たる理由はあるんだが、それを指摘するとどんな反応するだろうか。

「・・・・・・?」

突然黒猫が目を細める。その視線の先はあやせだ。

「あなた・・・」

「・・・何ですか」  

黒猫は溜息をつき、俺の服の裾を引っ張る。

「ちょっと来なさい」 

「な、何だよ」

あやせから離れた場所で俺たちは向かい合う。

あやせが頬を膨らませて俺を睨んでいるが・・・

「あなたには失望したわ」

黒猫はそう切り出した。

「いきなりだな」

「弁解の余地があるとでも?」

「いや、ないよ」

御鏡の偽彼氏事件から、黒猫に振られるまで、
この夏の俺は徹頭徹尾ダメなやつだった。

今も、俺の自己評価は下降中なのである。

「あの子とあなたはどういう関係なのかしら?」

「妹の友達とその兄貴、そんだけだよ」

「その割にはずいぶん仲が良さそうだったわね」

それは完全な誤解だぜ。
泣きたくなるけど、あいつにとって俺は親友を狙う鬼畜兄貴だからな。

俺はふと、問うてみた。

「・・・もしかしてお前、嫉妬してたの?」

「・・ふん」

図星だったらしい。黒猫が唇を尖らせる。

しかし急に真剣な表情で、

「私は・・・あの子とくっつけるためにあなたを振ったんじゃないわ」

そう、呟いた。

「・・・・・・」

「まぁいいわ。今日の輪をかけて鈍感な、
 一緒にいる女の子の不調にも気づかないあなたなら、
 私の恐れる事態になることもないでしょうから」

「不調?どういうことだ」

「あの子に聞いてごらんなさい。私は気が変わったから失礼するわ」

黒猫は俺に背を向け歩き出す。

あやせが靴音を鳴らして近づいてくる。

「本当、何なんでしょうあの人は?」

俺はそれに答えず、あやせの額に手を当てる。

「きゃっ」

「お前・・・熱あるじゃねーか」

微熱ではあるが、触れた額が熱い。

「いつからだ?」

「今朝から・・・です」

それなのに俺は、あやせに無理をさせたのか。

「すまん」

「どうして先輩が謝るんですか?わたしが誘ったことだし、
 わたし、今日は楽しかったですよ」

 健気に微笑みかけてくれる。ああ、お前はそう言うと思ったよ。

罪悪感が肥大してくる。

「帰ろう」  「でも・・・」

「悪化したらどうするんだ。桐乃が悲しむぞ」

あやせが身体を震わせる。やはり桐乃の名前は効果覿面ようだ。

「わかりました」 

俺たちは駅前に移動し、タクシーへと乗り込んだ。

運転手に行き先を告げ、車を走らせてもらう。

黒猫には後でお礼を言わないとな。

ダークサイドに落ちても、やっぱりあいつはいいやつなんだよ。

「お兄さん、肩を借りてもいいですか?」

「ん、ああ」

揺れる車内の中、あやせは身体を密着させ頭を俺に預けてくる。

「今日のわたしがおかしいのは、熱のせいです。

 明日になればいつものわたしに戻ります。

 だから・・・今だけは、甘えさせてください」

・・・疲れたのだろう。ほどなくあやせは寝息を立て始めた。

なぁ、あやせ。本当に今日のお前は変だよ。

でも、素直でしおらしいお前も悪くないぜ。

お前がよかったら、また荷物持ち・・・いや、デートしてやるさ。

そんな想いを込めて、一度だけあやせの頭を撫でた。

その寝顔は、とても愛らしいものだったよ。


あやせを家まで送り、自宅に着いた頃には日も暮れていた。

玄関の扉を開けると、桐乃が無表情で座り込んでいた。

「ただいま」

俺を認めた桐乃は、刹那、寂しげな笑顔を浮かべ、とてとてと近づいてきた。

「どこ行ってたの?」

「まぁ、ちょっとな」

本当のことを話せば怒られるのは目にみえているので、曖昧に答える。

「・・・あっそ」

「何か用事か?」

「・・・別にぃ」

用は済んだとばかりに桐乃はリビングへと消えていく。

俺はその背中を首をかしげながら見送っていた。
スポンサーサイト



  1. 2013/07/23(火) 22:31:30|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ