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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

アルトネリコ 二次創作 クロア×ジャクリ後日談SS            ~世界の頂上でシアワセを詩う彼女~  第17話

薄暗い通路は響く足音と相まって不気味なものに思える。

「この先に何があるんだろう・・・」

オリカが言う。

「おそらく、レーヴァテイルに関わるものでしょうね」

入り口の扉は、ヒュムノスを謳えないと開けられないのだから。

「ヒュムネクリスタルだと思うわ」

あながち的外れな推理でもないだろう。

一方で、新たな疑問も浮かんでくる。

例えば―――この場所。

プラティナやテル族と交流を断絶していた頃のホルスの翼の民が
ヒュムノスに反応する扉を作れるはずがない。

第二世紀末期より以前に造られたのは間違いないが、
こんな人目につかない場所を選んだのは明らかに怪しい。

まるで表に出せないようなものを隠しているような・・・

「厄介なことにならないといいけど・・・」

往々にして嫌な予感は当たるものだ。

半ば諦観にも似た想いで、足を動かし続けた。

やがて。

無機質な通路から一変して、得体の知れない装置という装置が
所狭しと並ぶ乱雑な部屋に辿り着いた。

装置から伸び床に張り巡らされたコードが、
中央のカプセルのようなものへと続いている。

私とオリカはカプセルへ近づいた。


少女が、眠っていた。


上下する胸の膨らみが、彼女の生命活動を証明している。

髪型や色は異なるがその顔立ちはミュールに似ており、
どことなくシュレリア様の面影もある。

「β純血種・・・?それとも第三世代・・・いや、人間かしら?」

見たところ周囲に他の人影はない。

埃の上に私たちの足跡が残り、ずいぶんと長い間ここに訪れた者はいないらしい。

この娘はずっと一人で眠っていたのだろうか。

「えっと・・・これかな」

オリカが横のスイッチを押す。

「ちょっと、勝手に触っちゃ、」

制止も間に合わず、カプセルが音を立てて開いてしまった。

「・・・ん」

身じろぎの後、目を開いた少女と視線が合う。

「・・・だぁれ?」

それはこっちの台詞でもあるのだけど。

「私はミシャ。こっちはオリカ。あなたは?」

身体を起こした少女は、何故か首をかしげる。

「あなたの名前は?」

「・・・ない」

「え?」

「名前、ない。まだ付けてもらってないから」

付けてもらってないって・・・どういうことだろう。的を射ない。

「固体番号ならある。RN74123964」

「こ、固体番号・・・?」

思考がこんがらがってゆく。

「あなたはレーヴァテイル・・・かしら?」

「そう。ジェネリックβ」

ジェネリックβ・・・どこかで聞いたような・・・

「とりあえず場所を移しましょう。私たちに付いてきて?」

「わかった」

素直で助かるわね。プラティナに向かおう。シュレリア様やミュールなら、
ジェネリックβ」について何か知ってるかもしれない。


「そうはいかないよ」


いつの間に現れたのか。
一つしかない部屋の出入り口に男が立ち塞がっている。

白いローブで全身を覆い、隙間から褐色の肌が覗き、
人間の耳の位置には、鋭く尖った耳が自己主張している。

テル族の少年だった。

「その娘を渡してくれないかな。大人しくすれば攻撃はしないからさ」

悪役の言葉そのものね。

幼い外見や静かな立ち振る舞いとは裏腹に威圧感を放っている。

「丸腰の女相手に威嚇するようなやつにはろくなのがいないわ」

冷や汗を拭い、庇うように少女の前に立つ。

「無駄な抵抗は止めたほうがいいよ、お姉さん」

「無駄かどうかはやってみないとわからないわ」

冷静を装うが、内心では焦っている。

3対1なのに、不利なのはこっちだからだ。

「言っとくけど、僕が詠唱する暇を与えるなんて思わないでよね」

「・・・・・・」

「β純血種だって、護る騎士がいなければ何もできないでしょ」

どこかの元ラスボスに聞かせたいわ。

最初からチートだったくせに、塔と結線してますます強くなったミュールなら
どうにかできるだろう。

まぁ、私たちに無理なのはその通りだけど。

でも、私たちの弱点はこいつの弱点でもある。

こいつは油断してる。

私にも、武器はあるのだ。

ライナーがグラスメルクで作り、護身用にと渡してくれた
うさぎ形の爆弾・・・ソリッドうさこが。

「外に焦げたパクパクフラワーがいたわ。あなたの能力は“爆発ね”?」

「へぇ・・・ご名答だよお姉さん」

不思議な能力を持つテル族は、いくつかの流派に分別することができる。

アル兄ぃなら“念願成就”、リルラなら“テレポート”という具合だ。

爆発の射程距離はわからないけど、先にアイテムを作動させたい。

そうすれば勝機はある。

自分も巻き込まれそうで怖いけど・・・いちかばちかだ。

「あなた、名前は?」

「シオンだよ」

シオンと名乗った少年が近づいてくる。

私はシオンが効果範囲に入るのを待つ。

一歩、また一歩と張り詰めた空気の中に足音を刻み、
私が唾を飲み込んだところでシオンは足を止めた。

「ねぇ、星詠のお姉さん。既に役目を終えたこの世界は退屈じゃない?」

「・・・・・・?」

「終末へ時は加速している。気づいてないのは人だけだ。
 止めたいなら、お姉さんも舞台へ上がらないとね」

「何を言って・・・」

困惑する私をシオンは冷徹な両眼で貫く。


「―――背中ががら空きだよ、お姉さん」


何かが風を切る音がした。


“背中から”襲ってきた衝撃は軽く私を吹き飛ばし、私は頭を激しく痛打する。

「う・・・ぁっ」

視界がかすみ、頭が割れるように痛い。

気持ち悪い感触が首筋に伝う。出血しているようだ。

これは・・・致命傷かもしれない。

それでも私はどうにか歯をくいしばり、実行者を睨みつけた。


「オリカ・・・何で・・・」


意識が朦朧としてうまく言葉を紡げたかわからない。

だけど、オリカが片手に握る凶器―――バトンのようなもの―――を
確かに見た。

「くすくす、気づかないなんて間抜け。間抜けは床にキスするのがお似合いよ」


オリカだったものが、変わってゆく。


数度の瞬きのあと、それはテル族の少女になった。


「あたしたちじゃ扉開けられないから困ってたんだよねぇ。
 そんな時たまたまあんたを見かけてさ。何度かイム・フェーナに
 仲間と来てるのを見てたから、簡単に変身できたわ」

身体に力が入らない。

助けなきゃ・・・真っ青な顔で震えてるあの子を助けなきゃ・・・

なのに目の前が暗くなっていく。

「・・・らい・・・な・・・」

想いを寄せる騎士の顔が脳裏によぎり・・・


私は意識を手放した。




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  1. 2014/08/31(日) 00:14:28|
  2. アルトネリコSS(修正中)
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