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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

アルノサージュSS イオン×アーシェス 次元(トキ)をかける少女 第2話

僕とイオンはほのかのの『くるりんてん』へやってきた。

タットリアたちに僕のお別れ会の参加を打診するためだ。

「もちろん行くよ。友達のアーシェスのためだもん。
 店は・・・休業することになるけど、しかたないか」

「僕も行くつもりだよ。アーシェスのおかげで、フェリエを助けることができたからね」

タットリアとヴィオは心よく参加を約束してくれた。

「フェリエももちろん行くだろ?」

「えと・・・あたしは・・・」

「どうしたんだよ?」

『薬で病気を抑えているとはいえ、フェリエにフェリオンまで来てもらうのは
 厳しいんじゃないかな。無理はさせられないよ』

「ううん。タットリアの薬のおかげで大丈夫だよ。
 ただ、そのパーティって他の人も来るんだよね。
 知らない人がいっぱいいるのって、ちょっと不安かも・・・」

「ああ・・・みんなフェリエちゃんより年上だもんね」

一回り以上離れている者もいるため、どうしても緊張してしまうだろう。

「・・・だったら、ここで、このメンバーだけで行う?」

「え?」

「規模は小さくなっちゃうけど、それならフェリエも気を遣わなくていいでしょ?」

「名案だよ!ヴィオ、おまえ頭いいな!」 

「そうだね。それじゃ、早速食べ物を買ってこようか」

「わざわざ買ってこなくても、『ぼくらのミイラ食』とか『シャーリービーンズ』を
 出せばいいじゃん。姉さんたちが買ってくれればもっといいんだけど・・・」

「人間のわたしとフェリエちゃんには食べられないよぉ・・・」

シャールの味覚は人間とかけ離れているため、
人間にとってのゲテモノがシャールたちにはごちそうになりうることがある。

そういえば、ネイが作る料理がゲテモノばかりなのは、
シャールであるネイが自分の味覚を前提に作っていたとしたら合点がいく。

・・・いや、でもネイの料理はヒトガタのキャスにも不評だったし・・・

やっぱり、アレはもはやネイの才能なのだろう。

『フェリエは、何か食べたいものはある?』

「あのね、前にお母さんが買ってきた本に載ってた『ばなみる』って
 デザートが食べたいな」

「いいね、わたしも食べたいよ!」

『なら、天領沙羅に行こう。カノンにも伝えないと』

「じゃあ俺たちも準備するか。ヴィオ、貸切の札を表に出しといて」

「まったく、これくらい自分でやりなよ」

「・・・ほんと、何で薬屋に貸切の札があるんだろう?」

イオンの当然の疑問に、タットリアもヴィオも答えてくれることはなかった。

ちゅちゅ屋に着くと、外から覗く店内はシャールたちでごったがえしていた。

数分ほど待って、足を踏み入れる。

「いらっしゃいませ。こんにちは、イオナサル、アーシェス」

僕たちに気づいたカノンが、笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは、カノンさん」

『景気は良さそうだね』

「ええ。お金儲けのために経営しているわけではありませんが、
 たくさん来てくれるお客様を見ると嬉しく思います」

「シャールだけじゃなくて、人間のお客さんも来てるんですね」

「そうですね。今では当たり前になってきました。
 中には人間とシャールのカップルで来られるお客様もいるのですよ」

「すごく素敵なことだと思います」

「それで、今日はお二人はお買い物ですか?」

「あ、ばなみるとチェルノトロンを、それぞれ4つください」

「ありがとうございます」

お金を払い商品の入った袋を受け取ろうとすると、
それより早くイオンに取られてしまった。

「あなた・・・わたしは先に駅に戻ってるね」

『あ、イオン・・・』

引き止める間もなく風のように去ってしまった。

「・・・イオナサルは何か用事でもあったのでしょうか?」

僕とカノンに気を使ったのかもしれない。

だけど僕はあえて触れず、本題を切り出す。

『・・・これからイオンやシャールのタットリアたちと、僕のお別れ会を開くんだ』

「え・・・・・・」

表情を凍りつかせるカノン。

『サーリが、そろそろ僕の接続が切れるって言ってたんだ。
 その前にみんなで集まろうってことになった』

「そう・・・ですか・・・その会には、私は参加してはいけませんか・・・?」

『ごめん、人見知りの子がいるから遠慮してほしい。
 でも3日後にフェリオンのネィアフランセでデルタやキャスたちも
 集まってくれるから、そっちには来てほしいんだ』

「はい・・・行きます、必ず・・・」

『無理して前みたいに倒れないようにね』

「ふふ、お心遣いありがとうございます。
 イオナサルにも言われたとおり、もう無理はしないのでご安心ください」

『それじゃカノン、またね』

「ご来店、ありがとうございました」

駅へ戻ると、イオンは困ったような―今にも泣きそうな―笑顔を浮かべていた。


再びくるりんてん。

「美味しい・・・!」

「めっちゃうめぇ!」

「こんなに美味しいもの初めて食べたよ。これは何個でもいけるね。
 もっと買ってきてくれたらよかったのに」

「思ったとおりタットリアやヴィオにも大好評だね」

小さな口で懸命にかぶりつくヴィオが微笑ましい。

『そういうイオンも、もう食べちゃったの?』

「えへへ・・・だって本当に美味しいんだもん」

「それで、アーシェスはいつラシェーラに行くの?」

「え?」

一瞬、時間が静止したような錯覚を覚えた。

僕たちの視線がフェリエに集中する。

だがフェリエは、僕たちの強張った様子に気づかずに続ける。

「アーシェスはラシェーラに行ってしばらく会えなくなっちゃうから、
 この会を開いたんでしょ?」

『・・・・・・』

「あのね、フェリエちゃん。アーシェスは・・・」

辛そうなイオンに代わり、僕は自分で真実を告げた。

『フェリエ。僕はラシェーラじゃなくて、自分の世界に戻るんだ』

「アーシェスの世界?それって、遠いの?」

『すごく遠い。もう会えないかもしれないくらい』

そもそも遠いという表現も正しくないかもしれない。

ただ、少なくとも僕は詳細に説明出来るだけの術を持たない。

「そんなの嫌だよ・・・友達になれたのに」

『ごめんね、フェリエ』

どうにもしてあげられない自分がもどかしくてしかたない。

「・・・わがまま言わないで、送り出してやろうよ。
 アーシェスだって、寂しいって思ってくれてるはずだからさ。
 それに、これはお別れじゃなくて、アーシェスの新しい旅立ちなんだ。
 だったら、笑顔で見送ってやるのが友だちってもんだろ?」

「・・・そうだね。それに会えないかもしれないってことは、
 会えるかもしれないってことだよ」

言葉を選んでフェリエを励ます、二人の優しさが嬉しい。

こんな時、僕は本当に良い人たちに恵まれたと実感する。

「・・・・・・わかった」

「フェリエちゃんはいい子だね」

「でも!・・・また絶対会おうね、アーシェス」

『・・・うん』

約束、とは言えなかった。


楽しい時間も辛い時間も、時は残酷なまでにその針を止めてはくれない。

深まる夜にフェリエが船を漕ぎ出したところで
お別れ会はお開きと決まった。

「フェリエは送ってきたよ」

「お疲れ様、ヴィオ。それじゃわたしたちも、宿に行こうか」

「別に今日くらい泊まっていってもいいのに」

「さすがにそれは悪いよ。わたしたちはここのところ毎日
 遅くまで会話してるから、タットリアにも迷惑だと思うし」

「そんなこと気にしないけどなぁ。俺、寝つきはいい方だし」

「タットリア、イオンの気持ちを酌んであげなよ。
 イオンはアーシェスと二人きりになりたいんだ」

「・・そうなの?」

「う、うん・・・」

「なら・・・しかたないか。それじゃ・・・ここでお別れだね」


出会ってから長いとは言えない時間だけど、いろいろなことがった。

調合で作ったのはカソードやTXバイオス、奇天烈な物だけじゃなく、
僕たちの思い出でもある。


「・・・姉さんは、これからもいるんだよね?」

「うん。ずっと・・・ここにいるよ」


イオンは・・・ネロと共にラシェーラに帰化する道を選んだ。


プリムはイオンたちが元の世界へ帰る方法を示したが、それでもイオンとネロは
この世界で出来た仲間たちと生きると決めた。

その選択が正しかったのかどうかはわからない。

でも僕は、二人の意志を尊重してあげたいと思う。

「フェリエを助けてくれて本当にありがとう、アーシェス」

『がんばったのはタットリアだよ』

「いや、アーシェスの頭がなかったらあの薬はできなかったよ。
 詩魔法のことも気づかせてくれたし。やっぱアーシェスのおかげさ」

『役に立てたなら、嬉しい』

名残は尽きないけれど。

『タットリア、これからもお店の経営がんばってね』

「へへ、まかせとけって。ヴィオもフェリエもいるし、心配はいらないよ」

『・・・それじゃ、行こうかイオン。いつまでもここにいたら、
 タットリアも泣けないだろうし』

「な、なんてこと言うんだよアーシェス!? 泣くわけないだろ!」

『・・・僕の時は泣いてくれないの?』

「こ、子どもじゃないんだから泣かないって!」

その割りには、目が潤みはじめてるけど。

「もう、あんまりタットリアをからかっちゃダメだよ」

イオンにたしなめられたので、ここまでにしよう。

『・・・じゃあ、こんどこそ行くよ。二人共、ずっと元気でね』

「アーシェスもね」

「またな、アーシェス!」

大きく手を振って、アーシェスになって初めてできた友だちに別れを告げた。


「タットリア、またねって言ってくれたね」

『いいやつだった、本当に』

「そうだね。それで、明日はどうする?
 あなたの行きたいとこ、やりたいこと、何でも付き合うよ」

残り少ない時間を使ってでもやらなければならないことが、一つある。

『デルタと風呂に入ろう』

「・・・・・・え?」

呆気にとられたイオンの表情が、なんだかとても愛らしかった。





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  1. 2016/10/25(火) 23:28:41|
  2. アルノサージュSS(完結)
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