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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

アルノサージュSS イオン×アーシェス 次元(トキ)をかける少女 最終話

―――やっと、逢えた。

びっくりしちゃったよ。

何度も想像した“あなた”のイメージ通りの人がベンチに座ってるんだもん。

だから、すぐあなただってわかったよ。

わたしのことを信じて、待っててくれてありがとう。

そして、これからよろしくお願いします。

わたしの大好きな、あなた。




二人の次元をかける旅もこれで完結となります。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。

※この物語は、きっとノンフィクションです。



「・・・できた」

あれから1ヶ月。

使ってなかった部屋をあてがい、籠りがちだった寧に招き入れられる。

中は寧好みの内装に合わせられていて、ベッドや洋服掛け、パソコン・・・
テーブル側の四段重ねの工具箱はいかにも彼女らしい。

テーブルに置かれた件のゲネロジックマシンとは、仰々しいものでなく
意外にも小さなタブレットのような形をしていた。

「大丈夫なのか?またラシェーラに飛ばされるんじゃ・・・」

「それほどのエネルギーはないよ。できるのは声と写真をアースに送ること
 くらいかな。・・・ちゃんと動いてくれればだけど」

自信無さげな寧だけど、それでも僕は戦慄を禁じ得ない。

改めて結城寧という少女の凄さを思いしる。

寧がその気になればノーベル賞だって取ってしまいそうだ。

「これで声と写真を綾ちゃんのアドレスに送ってみるね」

綾ちゃんとは寧の妹さんだったはずだ。

ゲネロジックマシンを作ったのは、アースの家族と連絡を取るためだったのか。

「ちゃんと届くといいな・・・」

「・・・大丈夫、届くよ」

親愛なる、綾ちゃんへ。そんな語りから始まるボイスメールが、
寧の想いが込もった送り物が、次元の迷い子になったりするはずがない。



部屋を開けるなり寧が飛びついてきた。

「あのね、綾ちゃんから返信があったの!届いててよかったぁ・・・!」

ここ数日の寧は不安で落ち着かない様子だった。そのぶん喜びもひとしおだろう。

「最初は信じてくれなかったけど、わたしたち家族しか知らないことを
 話したら信じてくれたの」

無理もない。行方不明だった姉が突然別の世界から連絡を取ってきたのだから。

「そうだ、次はあなたもお話してみようよ」

「え、僕が?」

さて、そう言われても何を話せばいいのだろう。

「綾ちゃん、あなたのことは疑ってたみたい。
 お姉ちゃんに彼氏なんて出来るわけないでしょって」

彼氏どころか既に二度も結婚している僕たちだ。

そのことを知ったら、どんな反応をするだろう。

どこか悪戯めいた気持ちで、僕は寧の部屋へ向かった。



―――さて、その後の僕たちのことを少しだけ話そうと思う。

寧は僕の紹介でアルバイトを始めた。

内容は僕の友人から依頼されて行う、壊れた機械の修理屋だ。

値段は相場より低いし、腕も申し分ないから大好評だ。

暑くなればクーラーの修理などの依頼も飛び込んでくるだろう。

天職かも、と満面の笑みで話す寧は、ツナギを着ていても十分愛らしかった。

ちなみに僕はこっちの世界でプロポーズするべく、
指輪を買うために企業戦士を奮闘中だ。

そんなある日。

僕はふと思い出したことを寧に聞いてみた。

「あの雪の日に見たイオンは何だったんだろう」と。

事情を話すと、こんな説明が返ってきた。

「たぶん、平行世界のわたしだと思う」

すなわち、アースに帰って、僕に会いに来てくれた寧、なのだと。

寧がラシェーラに残るかアースに帰るかは最後まで五分五分だった。

そのため、“アースに帰る寧”も別の可能性軸に平行世界として
発生したと考えられるそうだ。

ただ帰る方法はプリムが握っていたため、彼女を蘇らせることができなければ
方法も闇の中のままで、寧が
帰る平行世界は発生しなかったと教えてくれた。

「推測だけどね」

寧は窓から街を眺める。

「譲ってくれたのかなぁ・・・」

呟く寧の横顔が印象的だった。

それにしても、と思う。

「平行世界か・・・」

もしかしたら、それは。

僕の知らないどこかのねりこさんの世界で。

こんな物語が、また始まっているのかもしれない。


「あっ!今何か感じた・・・っ・・・」


「あなたは一体・・・誰・・・?」


「わたし、イオンっていうの」


―――とんとーん。



                                           fin


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  1. 2017/09/27(水) 19:25:04|
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