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君の知らない玉手箱

溶けそうで溶けない、アイスクリイムのようなブログ。

オリ小説 最強と最弱の彼女 第1話

ある少女は、絶望的なほどに魔法使いとしての才がなかった。

ある少女は、己の居場所を見失うほどに天賦の才に恵まれていた。

同じ魔法学校に在籍しながらも正反対の二人は、しかし気が合った。

親友と呼べる間柄で、これからもその関係はずっと続くだろう。

二人の魔法使いはそう思っていた。

だが、ある日を境にその状況は一変する。

最強の少女は、最弱へ。

最弱の少女は、最強へ。

二人の関係は逆転し、彼女達は今まで知らなかったもう一つの世界を見る。

絶望、孤独、挫折、嫉妬・・・

相手が体験してきたことを己が体験することでより強固に結びつく二人の絆。

これはそんな物語。

二人の魔法使いの、友情の物語。

―――――――――――――――


ルーシェ国立魔法学校は、世界中から集まった魔法使いの卵たちが
一人前を夢見て、広大な敷地と充実した設備に囲まれながら
日々の修練に明け暮れる屈指の巨大な魔法学校だ。

生徒の一人、志宝院優雨(しほういん ゆう)は、

“学校始まって以来の最底辺魔法使い”として認知されている。

高名な魔法使いを多数輩出してきた名家に生を受けながら、
まるで才能に恵まれず授業についていくことすら困難だからだ。

そのため彼女は放課後の居残り練習を日課としていた。

学校の敷地外れにある森の中心、こんこんと水が湧き出る泉の傍で
優雨は今日も精神を集中する。

行使する魔法をイメージし、血液のように全身を流れる魔力を
右腕へ集めて、握り締めた拳を開き、手のひらから魔法を
空中に具現化させていく。

火花を散らせながら燃え盛る火球、ファイヤーボールだ。

火球を固定させれば、次は火球の巨大化だが・・・

「あっ・・・」

集中力が途切れて、魔法が消滅してしまった。

「またダメ・・・」

初歩の魔法すら、うまく行使することができない。

魔法使いに必要な魔力が、優雨はすずめの涙ほどしかないのだ。

そんな彼女がなぜ魔法学校に入学したかといえば、
それは周囲に振り回されてきたからに他ならない。

志宝院家は、魔法に携わる者なら知らない者はいないとされる名家だ。

中でも現当主の志宝院秋久(しほういん あきひさ)は数十年に一人の
逸材と名高く、魔法使いだけでなく家長としても優秀で、
彼が娶った相手も名家の令嬢となれば、誰もがその子に期待するのは
至極当然のことだろう。

だが、その期待は優雨の成長とともに裏切られ、一家の恥と判断された
優雨は、志宝院家から追い出されてしまったのだ。

優雨は今、アルバイトをして一人で生計を立てている。

「クスクス、相変わらずダメダメですね~」

制服のポケットの中から、小さな使い魔が顔を出す。

「・・・次はできるもん」

「さっさと諦めちゃえばいいじゃないですか」

使い魔とは、魔法使いが人形に魔力を込めて
仮初めの命を与えた人造生命体だ。

この使い魔・ミューイは、優雨が親友から受け取った
口は悪いがもう一人の親友と呼べる存在である。

見た目こそ小さな女の子がおままごとに使うお人形そのものだが、
使い魔の強さは創造主(マスター)の能力に左右され、
ミューイのレベルは優雨より遥かに高い。

「諦めないよ。きみのご主人様と約束したんだから」

「そうですか。ま、ご勝手に」

「18時になりました。まだ残ってる生徒は速やかに―――」

「っと、いけない」

下校を促すアナウンスに、優雨は教室に置きっぱなしの鞄を取りに
校舎へと戻っていった。



生徒たちとすれ違いながら階段を上っていく。

彼らが遅くまで残っていたのは、学校祭のためだ。

通常の学校同様、魔法学校にも文化祭はあり、魔法で作ったお菓子の販売や
魔法を使った見世物を行うのである。

特段に盛り上がるのが、生徒のNO.1とNO.2が一騎打ちで戦う、
演武と呼ばれるパフォーマンスだ。

数年ぶりに行われるとあって、開催前からいまや遅しと校内は盛り上がり、
生徒たちも準備に精を出している。

「まぁ、優雨さんにはまったく関係ないですけどね」

「へこむからやめて」

もちろん優雨も準備に進んで参加したかった。

しかし魔法を使う以上、足手まといになることも事実だった。

ならばみんなの邪魔をせず、遠くから見守っていようと考えるのが
優雨という女の子なのだ。

「優雨さん、あれ・・・」

「え?」

ミューイの視線の先、3階と4階を繋ぐ踊り場の窓から、
少女が物憂げに外を眺めている。

見覚えがあるどころか、優雨とは深い因縁がある少女だ。

優雨の足音に気づき、少女が顔を向ける。

優雨を突き刺す、冷たく見下した目。

「こんばんは、風ちゃん」

彼女の名は、志宝院風香。

役立たずの優雨の代わりに、分家の三ノ宮家から引き抜かれた
優雨の義妹だ。

「まだいたんだ?さっさと退学すればいいのに」

視線と同じ声色。

志宝院家の期待を一身に背負う彼女こそ、件のNO.2である。

「演武出場と、卒業試験の合格おめでとう」

「あんたに祝福される筋合いないわ」

「あるよ。私、お姉ちゃんだもの」

「あたしはあんたなんか、一度も姉と思ったことない」

吐き捨てるように言う。

「あんたを見てるとイライラする。
 もう会わなくていいと思うとせいせいするわ」

「たはは・・・」

優雨は困ったように頬をかくばかり。

その様子が、更に風香の怒りを逆なでする。

「そうゆう態度がむかつくって言ってるの!」

風香は、自分の足元にも及ばない優雨をなぜか敵視していた。

「才能のないやつが、魔法使いなんかやってるんじゃないわよっ!」

「・・・・・・」

優雨は生来、大人しい女の子だ。

だからその凡庸さをバカにされて、自分の情けなさに腹を立てることは
あっても、その相手を憎んだりすることは一切なかった。

ただ、今回だけは、言い返さずにはいられなかった。

「やめないよ。今までがんばってきた自分を・・・
 
 自分で否定するのは、悲しすぎるから」

それは優雨の根幹にある想い。

周囲の期待に応えられず、家まで追い出されてしまった優雨を支えたもの。

だが、その言葉が風香にとって絶対の禁句であることを、優雨は知らない。

血が滲むほど唇をかみ締める風香の周囲に、大気中に存在する
魔法エネルギーが集束していく。

優雨を攻撃するつもりなのだ。

「優雨さん、遥かに格上の相手にケンカを売ってどうするんですか」

「ごめんね。ミューイは逃げていいよ」

「言われなくてもそのつもりです」

「そ、そうなんだ・・・・」

ミューイは本当にポケットから飛び出し、階段に着地する。

「優雨さん、今世は諦めて来世で一人前になってくださいね」などと
 のたまいながら、ミューイはどこかに走り去ってしまった。

さすがにショックだったものの、優雨は安堵する。

例えるなら優雨はウサギ、風香はライオンだ。太刀打ちなどできるはずもなく
ミューイを巻き込まずにすんだのは幸いだった。

やがて風香の前に無数の魔法の刃が出現した。

これで攻撃されれば、避けることはおろか耐えることすら叶わなそうだ。

良くて即死、悪ければ半死か。

「逃げないの?」

「逃げない。約束したから。

 いつかきっと―――背中を預けることができるくらい、強くなるって」

「・・・そう」

刃が、優雨めがけて放たれた。


・・・優雨には、魔法使いの才はなかった。


その代わりに、誰にも負けない強い信念と。


「そうだよ・・・だからこんな所で立ち止まっちゃダメ」


かけがえのない、親友がいた。


「っ!?」


轟音と共に、窓をぶち壊して飛び込んできた少女は、
優の前に立ちはだかり魔法壁を展開、触れた刃を消滅させる。

「星出・・・!」

「水月ちゃん!」

「お待たせ・・・優雨」

少女は優雨に微笑みかける。


星出水月(ほしいで みつき)。


彼女こそ、千を超える生徒の頂点にたつ、最強の魔法使いだ。

―――――――――――――――――――――

元々前編・後編で終わる予定が思ったより長くなりそうなので
シリーズにしました。

まだまだ拙いですががんばります、楽しんでいただけたらと思います。
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  1. 2012/11/14(水) 00:40:38|
  2. 最強と最弱の彼女
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:7
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コメント

凄いですね*
  1. 2013/01/03(木) 11:05:06 |
  2. URL |
  3. あやな⋈. #-
  4. [ 編集 ]

良かったです

説明を入れてくれたのでおバカちゃんな私でもついていけました。こころの描写が詩を取り入れてるなとおもいました。
  1. 2013/02/09(土) 19:31:53 |
  2. URL |
  3. RYU #-
  4. [ 編集 ]

返信です!

二次創作は他の原作あってのものなので、
自分の物語を作ってみたくなりました。

こころの描写をするのは好きです。
上手い、下手は別として(汗)

楽しんでいただけたようで嬉しいです^^
  1. 2013/02/10(日) 00:27:54 |
  2. URL |
  3. ソラ #-
  4. [ 編集 ]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2013/02/23(土) 05:45:03 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2013/02/24(日) 08:01:22 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

こんばんはー

何から読んでいいのかな、と迷い、このお話から読んでみました。
どうしてこんな素敵なストーリーを思いつくことが出来るんですかっ!羨ましいです。

優雨ちゃんが健気過ぎて泣ける。あ、使い魔のキャラが自分的にはツボです。
またお邪魔します。
  1. 2014/07/09(水) 18:01:05 |
  2. URL |
  3. rinka #-
  4. [ 編集 ]

返信です!

コメントありがとうございます^-^

私の表現では、なかなか実際に書きたい理想までは行けないのですが、
楽しんでいただけてすごく嬉しいです!

優雨はすごくいい子なんです。でもいい子ってだけじゃ
魔法使いはやっていけないですよね。戦闘になったら危険ですし。

ミューイはかなり腹黒ですw
  1. 2014/07/10(木) 00:23:01 |
  2. URL |
  3. ソラ #-
  4. [ 編集 ]

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まとめ【オリ小説 最強と最弱】

ある少女は、絶望的なほどに魔法使いとしての才がなかった。ある少女は、己の居場所を見失うほどに天賦の
  1. 2012/11/18(日) 10:10:25 |
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